俺、チョコはいらない。


放課後。


ああ。今朝会ったときに、橙也にチョコ渡しておけば良かったかな。


橙也とクラスの違う私は、休み時間に橙也の教室に行くも橙也がいなかったりで、タイミングが合わずチョコを渡せないまま放課後になってしまった。


よし。放課後こそは橙也に会って、渡すんだ。ぜったいに。


そう意気込み、私が廊下を歩いていたときだった。


「わたし、橙也くんのことがずっと好きでした。これ、受け取ってください……!」


女の子の声が、空き教室のほうから聞こえてきた。


“ 橙也くん ” って、もしかして……。


嫌な予感がし、声がした教室のほうへ目をやると。


……あ。


少し開いた扉から、橙也が同級生の女の子からチョコを渡されているのが見えた。


橙也は、小学生の頃から毎年女の子からチョコを沢山もらっていた。


高校生になってからも、それは変わらずで。


ほんとモテるよなぁ。


しかもあの女の子、学年で一番可愛いって言われてる子だ。


橙也、あの子からのチョコ受け取るのかな?


物陰に隠れてソワソワしながら、ふたりの様子を見守る。


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