あなたと私の恋の行方


「料理って呼べるほどのものじゃないですが……」
「そうか?」
「え~と、あと卵があったからオムレツなら作れます」

オムレツというと、小谷さんが嬉しそうな顔をした。好物なのかもしれない。

「あとは大皿と……」

私がスプーンを探していたら、佐野部長が腰を上げてキッチンへやって来た。

「こっちだ」
「あ、はい」

振り向いたら、また部長に思いっきりぶつかった。

「おっと」

「あ、スミマセン」

パーティーの時と同じ固い胸だった。
パッと離れたが、ふわりと鼻腔をくすぐる男性の香りにクラクラする。

(落ち着け、落ち着け、私)

取り皿を手に持って、深呼吸してからリビングに運ぶ。

「じゃあ、乾杯!」

小谷さんの明るい声に救われた気がする。

いつもの私なら、佐野部長のマンションに仕事とはいえ上がり込むなんて尻込みしていただろう。
キッチンまで使わせていただいているのは、小谷さんもいるからセーフだと思うことにしよう。

そもそも佐野部長は私のことなんて気にしていないのか、ビールを飲みながらパクパク食べている。

「オムレツもお願いします!」

小谷さんの注文を受けて、中がフワトロのオムレツを焼くと佐野部長からもオーダーされた。

「うん、旨い」

「よかったです」

伯母仕込みのオムレツを褒められたのが嬉しくて思わず笑顔になってしまう。

「そういえば」

佐野部長が『あれ?』という表情をしたと思ったら、ぐんと顔を付けて来た。

「な、なんでしょう」

向い側から整った顔がせまってきたので、うわずった声が出てしまった。

「どこかで会ったか?」

「「はあ?」」

今度は、小谷さんと声がハモってしまう。

「同じ会社ですから、すれ違ったことはあるかと……」
「いや、会社以外でだ」





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