あなたと私の恋の行方
佐野学さんと会うのは日比谷にあるホテルのラウンジになったと千也君から連絡があった。
軽くお茶してから、ふたりでご自由にどうぞいう配慮らしい。
約束の日曜日、十一時少し前にホテルに着いた。
今日は、千紘ちゃんセレクトの透け感のあるティアードスタイルのワンピースを着ている。
ダークカラーは着瘦せするそうで、胸元のシルバーのペンダントは千紘ちゃんから借りている。
バッグはいつも愛用している千也君プレゼント、靴はいつもより少しヒール高めだ。
気合が入りすぎているみたいで、チョッと照れくさい。
それにティールームで向かいに座っている佐野学さんはおひとりだというのに、私には真知子伯母さまと千也君が付き添っている。
「久しぶりね、佐野君」
「ご無沙汰しています、大河内さん」
佐野さんは学生時代から千也君の親友だと聞いていたが、真知子伯母さまとも親し気だ。
「いやだ、他人行儀だわ。いつもの通りにしてちょうだい」
「はい、真知子さん」
「いいわね~。若い人に名前で呼んでもらうのって」
いつも以上に伯母さまは華やいでいる。どうやら佐野さんのことはお気に入りらしい。
「母さん、今日はあなたがお見合いするんじゃないんですよ」
「わかってますよ、大事な姪っ子の由香ちゃんですもの。千也が学君がいいって言った時、私もピンときたのよ」
「そうでしょう」
なぜか千也君が自慢げだ。
「由香ちゃんと学君なら、お似合いだわ」
「お祖父さんも納得するでしょう。学は優秀だし、勤めている商社は成長株だ」
ほんの少し佐野さんの笑顔が引きつった気がしたけど、千也君と伯母さまは気が付かないみたい。
なにか気に障ったのかなと思ったけど、心当たりはなかった。
すぐに佐野さんも千也君たちとの会話に加わって、三人は思い出話で盛り上がっている。
(私のお見合いなんですけど)
所在なくコーヒーを飲もうとしていたら「遅くなりました」という、聞きなれた低音が耳に入った。
(佐野部長⁉)
こんなところに来たということは、佐野さんとは血縁関係だということだ。
(チャンと確認しておけばよかった)
千也君の親友だからと、釣り書きなしだったことが今さらのように悔やまれた。