あなたと私の恋の行方
トラブル
日曜日。朝からよく晴れていて、日中の気温はかなり高くなりそうだ。
初めて訪問する佐野家になにを手土産として持って行くか、どんな服を着ていくか迷いっぱなしだった。
千紘ちゃんが心配して、朝から西下家にわざわざ来てくれた。
選んでくれたのは上品なクリーム色の半袖ブラウスとダークなブルーの花柄のスカート。
おまけにメイクまでしてくれたものだから、いつもより二割くらいはアップしたかもしれない。
「気合い入れなさいよ!」
どんな気合かと訝しんだが、千紘ちゃんに背中を叩かれて迎えに来てくれた佐野さんの車に乗った。
千也君や小谷さんの車に乗せてもらうのとは違う緊張感があった。
佐野さんの運転はスムーズで、彼が大好きだという曲が流れていた。
ボーカルの癒される歌声を聞きながら、落ち着かなくてはと深呼吸する。
成城にある佐野家は、ずっしりと落ち着いた佇まいの家だった。
「お邪魔します」
佐野部長がいるんじゃないかとドキドキしながら、家の中に入った。
広い玄関に、ゴールドのビジューがついた若い女性向けのサンダルがあるのに気が付いた。
(妹さんかな? でも、妹さんいたっけ……)
サンダルを見た佐野さんの顔が一瞬歪んで見えた。
「ただいま」
佐野さんが声をかけながら長い廊下を進んで行くので、私もゆっくり続いて歩いた。
リビングルームらしい部屋のドアを開けたとたん「お帰りなさ~い」という大きな声がする。
明るい茶色のロングヘアの女性の姿が見えたと思ったら、その人は佐野さんに飛びついてきた。
「わっ⁉」
突然だったので佐野さんも驚いたのだろう。
なにしろその人は、佐野さんの首に腕を回しているのだ。
「百合絵」
私は目の前で起こっていることがドラマのようにしか見えなかった。