あなたと私の恋の行方




お昼休み、咲子と久しぶりに会社から外に食事に出る。
うちの会社の社食はマスコミでも取り上げられるくらい有名だけど、今日は気分転換が優先だ。

このところ仕事でもプライベートでもバタバタしていたから、咲子と話すのも久しぶりだ。
彼女お勧めのイタリア料理店に行って、日替わりのパスタランチを注文する。

「近頃お互い忙しかったもんね」

「ごめんね、誘ってもらってるのに、いつも行けなくて」

「もうすぐ、由香の誕生日じゃない。その頃には飲み会しようね」

咲子はずっと誘ってくれるからありがたい。今度こそ参加しようと心に決めた。

「ありがと、楽しみにしてます」
「同期たちにも声掛けよう」

「あ、それいいね」

楽しいおしゃべりで気分は回復してくるし、デザートのミニサイズのティラミスでお腹も大満足だ。

「食べ過ぎちゃった」
「午後、眠くなったらどうしよう」

昼休み終了時間を気にしながら会社の近くの交差点まで戻ったところで、咲子があっと小さく叫んだ。

「見て見て、あれ!」

咲子が指さした交差点の反対側には、佐野部長の姿があった。

部長ひとりではない。背の高い美女と並んでさっそうと歩いている。

「目立つカップルだね~」

「ほんと……」

見たくないものを見てしまったら、こんなに苦い思いをするんだ。

「佐野部長の恋人は、モデルやら美人秘書やらいるらしいからね」
「そんなに?」
「由香は興味ないだろうけど、佐野部長くらいのイイ男なら遊び放題、選び放題らしいよ」

「まさか⁉」

マンションにも女性の気配はなかったし、仕事であんなに忙しい人がそこまで遊べるだろうか。
そう思いながら、つい咲子の話を信じてしまいそうになる。

「最新の噂では、バツイチだから後腐れなく遊べるんだって話だよ」

「知らなかった……」

なんだか身体の力が抜けてしまった。
私だけが佐野部長のプライベートを知っているとうぬぼれていたんだろう。

今、佐野部長の横にいる女性はモデルだろうか、腕にさり気なく手を置いて歩いていた。

(大人の女性って、あんな人のことだろうな)

つばのある帽子からサラサラのロングヘアが流れるように落ち、大胆な花柄のワンピースを見事に着こなしている。
フレアースカートから膝下の長い、きれいな足がすんなり伸びている。

(ヒールの高いサンダルで、どうやったらあんなに綺麗に歩けるんだろう)

ぼんやりとふたりの姿を見つめてしまった。

ランチの美味しさも、咲子との楽しい時間もサラサラと指の間からこぼれ落ちていく。
砂をつかむような虚しさだけが、私の心に残った。




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