あなたと私の恋の行方



手術が無事終わり、病院を出てから携帯の電源を入れたら、小谷から何件もの着信とメールが入っていた。

慌てて読んだが、内容が理解出来ない。
小谷が送ってきた中で目に留まった文言は、謂れのない西下由香への中傷ばかりだ。

『西下由香が、女を武器に仕事を取った』

『上司の佐野柊一郎企画部長も事実を認めた』

どの内容も事実ではないし、初めて聞くことばかりなのに自分が認めるわけがない。

「何だこれは」

思わず声に出てしまった。

まず由香が心配になった。
こんなことを知ったらどれだけ傷つくかと思い連絡を入れたが、まさかの着信拒否だ。

(どうして出ない?)

慌てて、小谷に連絡した。

「送られたものを見たが、理解できない。これはどういうことだ?」

『僕にもわかりません。西下の同期から聞いて情報を集めました』

いつも冷静な小谷の声からも怒りを感じられた。

『チョッと裏がありそうなので、例の件も含めて弁護士に相談しています』

「弁護士?」

『西下の従兄です。さっき連絡したら、心当たりがあるみたいでした』

「そうか、世話をかけたな。すまない。こんな日に休みを取っていて」

私用で休むことなどなかったが、柊一郎を育ててくれた義母にはできる限りのことをしたかったのだ。

『お母さんの具合はいかがですか?』

「無事、手術は終わったよ。そんなに長くかからず退院できそうだ」

『よかった。どうやら、今回の件にもクイーンが関わっていそうです』

「やっぱり。なにか仕掛けてくるだろうとは思っていたが、俺じゃなくて西下が標的になるとは」

『貴方のアキレス腱ですからねえ。ま、クイーンが知っていたかどうかは判りませんが』

やはり小谷はなにか感じていたんだなと、改めて聡いやつだと感心する。

「君が依頼した弁護士に、証言者たちと会ってもらおうか」

柊一郎は小谷とふたりでコツコツと証拠を集めてきたのだ。

今度こそ、新川のパワハラを告発してやろう。目には目をだ。

由香を傷つける者を許すわけにいかないと、柊一郎は決意した。






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