お兄ちゃんなんて呼びたくない
……でも、いっか。

わざわざ振られるのに告白して、航くんと口を聞けなくなる方がよっぽど辛いのはいつも考えることだからよく分かる。

「いや、そういう訳じゃないけど……」

「ううん、戻すよ。航く……航、お兄ちゃん」

結局お兄ちゃん呼びをしていたときから、呼び方を変えたところで何も変わっていなかった。

少しは近づけたと思っていたけど、違った。

「ごめん、お母さんから早く帰ってこいってメール来ちゃった。先帰るね」

今にも落ちてしまいそうな雫を必死にその場に留めながら、笑顔で伝えて走った。
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