郡くんと甘いビターチョコレート
「立花、」
「……郡……真白、くん」
見上げて目が合って、すぐに逸らすように顔を伏せた。
……感じ悪い、わかってる。助けてくれた、お礼を言いたい。できない。
高校に入ってから私の人見知りはさらに悪化して、学校の人と話すことはほとんどなかった。
クラスの人なんて、何回、何人と話したことがあるだろう。きっと片手で数えられる程度。
そんな私とは正反対。“氷の女王”なんて言われる私とは正反対の太陽みたいな人。
こんなふうに誰とでも話せて、誰からも好かれるようになりたいって、私が密かに憧れていた人。
クラスメイトと話す感覚が鈍っている上に、クラスの人気者で私とは真逆な人なんて、目を合わせ続けることも、言葉を発することも不可能だよ。
……気まずい、気まずすぎる。
そんな空気を、無言の空間を作り出してしまっているのは紛れもなく私なのだけど。
言いたいことはたくさんある。
その中でも、「ありがとう」と「時間取らせてごめんなさい」だけ言えたら、それでいいのに。
「じゃあ、俺学校行くから……。立花は親御さんに連絡して、学校は休んだほうがいいんじゃーーーー「待って、」