郡くんと甘いビターチョコレート
◇甘ったるいヒーロー
▷
「……怜南」
その声にハッとして、我に返る。
放課後の教室、夕陽が差し込んでオレンジに染まるこの時間、私ともう1人だけがこの空間に存在する。
私のことを名前で呼ぶのは、お父さんとお母さんと、その1人しかいない。
「何考えてたの?」
「……なんでもない」
「俺は四六時中怜南のこと考えてるのにな」
「……っ郡くんのこと以外、考えないよ……」
「はは、知ってる」
満足げに笑って、私の頭をポンってする。
私の前の席に座って後ろを向いて、目と目が合う状態。