COMPLEX
こんなんじゃ、元々の性格が相まって、ますます人間関係希薄になるが、それはそれで結構ぐらいに思っていた。

しかし、それも終わりが来た。わかりきった事だが私はまた動揺した。

ウィルスの分類が2類から5類に移行し、人々はマスクを外し始めた。

「小雨(こさめ)さん、まだマスクしてるんですか?」

唐突に会社のエレベーター内で、顔を覗きこむように話しかけてきたのは、営業2課の中津川だった。

「前から言ってるけれど、下の名前で呼ばないでくれない?」

反射的に顔を隠すようにしながら言い放った。

「高橋さんってうちのフロアだけで5人もいるので、なんか混乱しません?他の人も下の名前で呼んでますが」

うーんと困ったように頭に手をかけながら、中津川が言う。

中津川って苦手だ。チャラくて、いつも怒られてもヘラヘラしてて、誰とでも仲良くて。

それにお節介だ。

・・・私みたいなのにも声を平気にかけてくる
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