開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
その4


午後8時34分…。
三浦美咲の自宅に詰めていた奈緒子のスマホが着信音を告げた。

”プルルーン、プルルーン…”

「野坂先生…!」

「うん、手島先生だわ…」

奈緒子は、美咲に目で合図してから電話に出た。


***


「はい、もしもし…」

『ああ、手嶋です。終わりました。今、国上先生と別れて和田先生の車の中です。これから戻りますよ』

「ご苦労様です…。それで…、現場の方は…?」

奈緒子は、クッションを抱きかかえてベッドの上でこっちを注視している美咲に顔を向けて、手嶋に首尾を尋ねた。

『…今、ハンズフリーで和田先生に代わりますので…』

「はい…」


***


『もしもし、奈緒子さん…。いや、野坂先生、カプセルは二つ撤去できましたよ。手紙のような中の紙片もサイズも一緒なので、まず、両方とも鬼島のブツに違いない。国上さんが持ち帰りましたから、安心してください』

「そうですか!カプセル二つはあったんですね…。それで、浄化祈祷の施術もつつがなく…」

ここでも奈緒子はずっと美咲と顔を合わせたままで、和田からの言葉を復唱した…。
美咲はもう、今にも泣き出さんばかりに、腕の中のクッションをぎゅうぎゅう握りしめ、クンクンと頷いていた。

『そうですか、近所の人に見つかるとかもなく無事に…。よかったあ…。本当にお疲れ様でした。こちらは特段異常ありませんでしたので。…はい、彼女にはきちんと伝えます。ではまた、後ほど。運転気を付けてください…』


***


「先生…」

「美咲ちゃん、例のカプセルは国上さんが持帰って、しっかり処置してくれるそうだから。心配いらないわ。夢に出てきた柳の木もお清めしてくれたそうよ」

「そうですかー。先生、ありがとうございます!」

「でも…、今日でくびれ柳を媒体にしたエネルギーが全部除去できたとは限らないそうなので、呼び寄せの夢は見ること前提で、3度目の柳の夢を見たら、この前言った通りの施術をね…」

「はい。よろしくお願いします…」

”ふう…、一応、これで一安心だわ。美咲さんも気持ちが強く持てるでしょうし…。お父さん…、もしかすると今夜、大きなヤマを越したかもしれないよ。私たちを見守っててね…”

こう心の中であの世の父に告げると、奈緒子は大きく胸を撫で下ろすのだった…。




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