開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
その2


「鷹山さん、そっちの方は画面を見る限り、変わりはなさそうですね」

「はい。今のところは…」

国上の作業堂で、カプセルと手紙を保管してある密閉ケースの中を監視している鷹山とは、スカイプで繋ぎ、美咲の部屋で待機中、国上はケースをカメラでとらえた画面に注視を欠かさなかった。

「国上先生、やはり、美咲さんの呼び寄せ夢が現れれば、”あっち”と連動するのでしょうか?」

美咲がベッドの上でイアフォンをつけて音楽を聴いているの確認した奈緒子は、スカイプの画面を脇から覗き込んで国上にそう尋ねた。

「その可能性は高いと思いますよ、野坂さん。ケースの中がどんな反応を示すかはわかりませんが…」

”国上さんも何らかの変化が起こることは予想しながらも、それが呼び寄せ夢にどういう影響を与えるのか思案しかねているわ…”

奈緒子も”それ”すなわち、鬼島の敷いた手であると承知していた。
奈緒子は、死人の腹を探るという、極めて奇異な感覚に困惑せずにはいられなかった…。


***


深夜2時半過ぎを迎えた。
美咲の部屋ではすでに3人の会話は途絶え、パソコンの起動音が静寂を刻んでした。

ベッドに座って音楽を聴いていた美咲は、そろそろ眠気が回って来た様子だった。
国上はスカイプでつながれた、作業堂のカメラ画面をじっと見つめつづけ、この時間は美咲の様子は奈緒子が担当していた。

”どうやら、美咲はちゃんが眠りに落ちるのは時間の問題だわ。国上さんにはスタンバイしてもらおう…”

「国上さん…、美咲ちゃん、間もなくかと…」

奈緒子は小声で告げた。
国上はスカイプのパソコン画面から一ッドの美咲に向き返った。

「そのようだ。奈緒子さん…、では事前の申し合せ通り、”助手”はお願いします」

「承知しました…」

二人の間には一気に緊迫感が走った…。






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