開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
開けずの手紙
開けずの手紙
「…今、開いた」
「うん。そのコンテンツページのちょうど真ん中近くにカーソルで移動させると、”開けずの手紙”ってタイトルの記事項目があると思う。どうだ?」
”開けずの手紙…!”
思わず丸島は、和田が口にした”それ”を心の中で叫んだ。
その言葉を耳にした瞬間、彼はその響きが言いようもなく自身の深いところに突き刺さった気がしたのだ。
だが、彼は平静な口ぶりを何とか保っていた。
「ええと…、ああ、あった」
「それ、クリックしてみろ。ページが表示されたら一通り読んでみろ。オレも今目を通してるが、どうやら今回の手紙に当てはまるかもしれない…」
「和田…、出たぞ」
二人は互いに同じ都市伝説系のあるページを読み込んでいた。
「おい、和田…。要するにこれって、藁人形とかと同様の恨みを持つ相手への呪いかけってことか…!」
「このページではそういう解釈だな。しかも、”最終発信”は自ら命を絶つ直前に書き記し、あらん限りの念を以って呪い先の人間へ送達する…。ただし、その呪いはあくまで届いた手紙を開けた後の発効と記してあるな」
「つまり…、封筒を開封して手紙を読まなきゃ、呪われないと…。さらにその手紙は焼却すれば、大方のケースでは呪いは消滅するってなってるな」
「ああ…。ただし、呪いを念じたものの強さ加減で一概ではないとも…。あくまで基本計で言えばってことだ。まあ、差出人を伏せるのも、開封させる目的ってことも書かれてるが…。封閉じ箇所の血のりみたいなシミって表記はないな」
二人の”開けずの手紙”に関したやり取りは20分ほど続いた。
***
「これはあくまでネット上の、一都市伝説サイトのそれこそウワサに基づく一指摘だし丸呑みはできないが、今の段階なら切り口としてはこれをベースにするのが無難だろう。…当然、お互いに他のサイトとかもチェックしていこう。…それで、大枠から踏み込んでいこうや」
「具体的にはどうするんだ?やはり、誰か霊能者とかにこの手紙をお祓いしてもらうとかかな…」
「いや、いきなり安易に”そこ”へは行かない方がいいんじゃないかと思う。…オレにはその鬼島から手紙、かなり怨念なりのパワーは強い気がするんだ。…仮定として、こっちの返信を受け取って2年半がまるまる彼の言う”逆恨み”の念を醸成させる期間に当てていたとしたら…。もしかしたら、単なる”開けずの手紙”ではないかもしれないって気がするんだ」
「基本形以外の…、もっと強い怨念を含ませた手紙ってことか…」
「…差出人を空欄にしたってのも、以前に送ってる手紙と同一筆跡だってわかることを承知でなら、思わず封を開けてしまうという狙いではないだろうしな。そのシミも、何か”意味”があると見た方がいい」
ここで丸島は、手元の手紙の赤く滲んだシミに視線を落とすと、全身がぶるぶると震えるようだった。
もう彼の頭の中では、そのシミは九分九厘、鬼島自身が意識的に施した”跡”であると確信に至っていたのだ。
***
「でだ…、そっちの手元にあるヤツからの手紙一式と、彼に送った内容証明の控え、それに鬼島の写真が写ってる卒アルの該当箇所をコピーしてオレの自宅に速達で送ってくれ。その間、初期相談できそうな相手を当たってみるよ」
「わかった。今からコンビニでコピーしたものを速達で手配しよう。…俺もいろいろネットで調べてみるしな」
「うん…。それと身の回りでなにか不可思議な現象とかが起きたり、気になるようなことがあったらすぐに知らせてくれ!」
ここで二人のスマホでのやり取りは終了した。
ここが、”本当の始まり”であった…。
想像を絶する恐怖と苦悩が彼を待ち受ける、次のステージの…。
この日から、鬼島則人が送り付けてきた”開かずの手紙”の、本当に意味するおぞましい展開が丸島友也を呑み込んでいくことになる…。
「…今、開いた」
「うん。そのコンテンツページのちょうど真ん中近くにカーソルで移動させると、”開けずの手紙”ってタイトルの記事項目があると思う。どうだ?」
”開けずの手紙…!”
思わず丸島は、和田が口にした”それ”を心の中で叫んだ。
その言葉を耳にした瞬間、彼はその響きが言いようもなく自身の深いところに突き刺さった気がしたのだ。
だが、彼は平静な口ぶりを何とか保っていた。
「ええと…、ああ、あった」
「それ、クリックしてみろ。ページが表示されたら一通り読んでみろ。オレも今目を通してるが、どうやら今回の手紙に当てはまるかもしれない…」
「和田…、出たぞ」
二人は互いに同じ都市伝説系のあるページを読み込んでいた。
「おい、和田…。要するにこれって、藁人形とかと同様の恨みを持つ相手への呪いかけってことか…!」
「このページではそういう解釈だな。しかも、”最終発信”は自ら命を絶つ直前に書き記し、あらん限りの念を以って呪い先の人間へ送達する…。ただし、その呪いはあくまで届いた手紙を開けた後の発効と記してあるな」
「つまり…、封筒を開封して手紙を読まなきゃ、呪われないと…。さらにその手紙は焼却すれば、大方のケースでは呪いは消滅するってなってるな」
「ああ…。ただし、呪いを念じたものの強さ加減で一概ではないとも…。あくまで基本計で言えばってことだ。まあ、差出人を伏せるのも、開封させる目的ってことも書かれてるが…。封閉じ箇所の血のりみたいなシミって表記はないな」
二人の”開けずの手紙”に関したやり取りは20分ほど続いた。
***
「これはあくまでネット上の、一都市伝説サイトのそれこそウワサに基づく一指摘だし丸呑みはできないが、今の段階なら切り口としてはこれをベースにするのが無難だろう。…当然、お互いに他のサイトとかもチェックしていこう。…それで、大枠から踏み込んでいこうや」
「具体的にはどうするんだ?やはり、誰か霊能者とかにこの手紙をお祓いしてもらうとかかな…」
「いや、いきなり安易に”そこ”へは行かない方がいいんじゃないかと思う。…オレにはその鬼島から手紙、かなり怨念なりのパワーは強い気がするんだ。…仮定として、こっちの返信を受け取って2年半がまるまる彼の言う”逆恨み”の念を醸成させる期間に当てていたとしたら…。もしかしたら、単なる”開けずの手紙”ではないかもしれないって気がするんだ」
「基本形以外の…、もっと強い怨念を含ませた手紙ってことか…」
「…差出人を空欄にしたってのも、以前に送ってる手紙と同一筆跡だってわかることを承知でなら、思わず封を開けてしまうという狙いではないだろうしな。そのシミも、何か”意味”があると見た方がいい」
ここで丸島は、手元の手紙の赤く滲んだシミに視線を落とすと、全身がぶるぶると震えるようだった。
もう彼の頭の中では、そのシミは九分九厘、鬼島自身が意識的に施した”跡”であると確信に至っていたのだ。
***
「でだ…、そっちの手元にあるヤツからの手紙一式と、彼に送った内容証明の控え、それに鬼島の写真が写ってる卒アルの該当箇所をコピーしてオレの自宅に速達で送ってくれ。その間、初期相談できそうな相手を当たってみるよ」
「わかった。今からコンビニでコピーしたものを速達で手配しよう。…俺もいろいろネットで調べてみるしな」
「うん…。それと身の回りでなにか不可思議な現象とかが起きたり、気になるようなことがあったらすぐに知らせてくれ!」
ここで二人のスマホでのやり取りは終了した。
ここが、”本当の始まり”であった…。
想像を絶する恐怖と苦悩が彼を待ち受ける、次のステージの…。
この日から、鬼島則人が送り付けてきた”開かずの手紙”の、本当に意味するおぞましい展開が丸島友也を呑み込んでいくことになる…。