開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
その2


”ナニガ、ミエルノ…?”

”変な木…。柳の木…。生きてるよ、あの木…。こわい!!”

声を出すことができないその苦悩…。
さりげないはずのごく簡単な動作が、重くて重くて、ここでは到底叶わない…。

口がセメントで固まってるようだ。
要はそう言うことだった…。

しかし、その最中にも言葉は聞こえ、伝わってきてる。
これは秒単位で、"この空間の自分"自身が確信を強めていた。
確実に。

”ダメ…、ヨ、ゼッタイ…”

それは優しい声…。
だんだん近づいてきてくれてる…。

それも、この空間で佇む美咲に何となくの実感として、手ごたえは得ていた。


***


”私の視界にいる私が、手で地面を掘っている‥。掘りたくなんかないのに…!柳の中からそこを掘れって…。だから、手が勝手に動いてるようだわ”

”ダメ!トメルノヨ…、アナタガ、ソノ、アタナヲ…”

”あなたは誰?誰なの?”

”スグ、ソバニ、イルノヨ、ワタシハ…、アナタト、イッショニトメルワ、ワタシモ…”

その”声なき声”は確かに近づいていた。
もう感覚的には耳もとだ。


***


”何かを掘り当てなきゃいけないの!止められないのよ!”

”やめてー!やめてー、そこの自分ー、そこの私ー!!”

もう一人の自分の動作はなかなか止まらない。
しかし”彼女”が、それを必死にやめたいという意思を持っていることは、その自分を視界に入れている美咲には伝わっていた…。

もはや視界だけを持つその美咲は、大粒の涙をボタボタこぼしながら、声に出ない大声で泣きながら絶叫した。

”ソコヲホレ、ナカノ、ホリアテタモノヲ、アケロ!”

ついにかの声が聞きとれた。
そして、その姿も…。


***


”柳の木の中に男が混ざってる!やせた若い男…。ダメーーそいつの言葉は聞いちゃダメー”

その声はその美咲にとって輪唱に捉えられた。

”さっきのオンナの人の声と一緒だ。一人じゃないんだよ、私…。すぐそばで柳の根元を掘っちゃダメだって、声をぶつけてた。ぶつけ続けてる”

それは意思を以って…。






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