開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
その11


「そう思っていいと思う。作業堂の様子もスカイプで見えてるし、何とかギリギリで抑えこめたようだ。鷹山さんは室外に出たようだから、こちらから連絡してやりましょう」

国上は笑みこそ浮かべていないが、その顔からは明らかにひと安堵したという表情が伺えた。

そして彼のその言葉で、奈緒子も肩で大きく息をつき、胸を撫でおろすのだった。

”なんてあどけない表情なの…。壮絶な生き地獄から生還したというのに…”

奈緒子は、かすかに寝息をたてながら”熟睡”に入った美咲の寝顔にしばし目を奪われていた…。


***


「…ああ、国上さん、今堂の中に戻りました。ケースはそのままですな。中も黄色い水になってて沈殿したみたいだ。うーん、中で浮いてる手紙も、もう普通のかみっぺらに見えますよ(苦笑)」

「こっちでも、よく見えます。とにかく、美咲さんが目覚めたらその結果はお知らせしますので…、いやあ、鷹山さんご苦労様でした」

「いえ。こちらからも、お礼申しますよ。…奈緒子さん、本当によく踏ん張ってくれましたね。すべては美咲さんから直接話を聞いてからだが、あなたの力がなかったら、彼女は救えなかったかもしれない。ありがとう、野坂さん。お父さんもさぞかしホッとされているだろう…」

鷹山はスカイプの画面で奈緒子をそう労った。
奈緒子は同じく画面前で目を潤ませながら、”ありがとうございました…”と一言発し、しばし画面の向こう側の鷹山にお辞儀をしていた…。


***


三浦美咲が目を覚ましたのは、それから30分ほどしてからだった。

「じゃあ、間違いなく、夢の中のキミはカプセルの中身…、2枚の紙を破ってその場に捨てた…。文字は目に入らなかった。読まされなかった。そうですね?」

国上は慎重に確認した。
まさしく、”このこと”が肝心だったのだ。

彼女は間違いないと断言し、ここに、彼らの目的は達したことが明確となる。

その後、部屋には両親も同席し、美咲から夢の中の”その他”のことを聞き出した。

中でも国上を驚かせたのが、くびれ柳の根元から抜根を伴っての倒木だった。
しかも上部を地面にめり込ませるというのは、鬼島が夢の中で呪われ手に”見せた”絵がらだった。

「このことは何を意味するのか…。奈緒子さん、もしかすると、K高校の実際のくびれ柳も倒れたかもしれない…」

「だとすると…、それは…」

奈緒子はある期待を頭に浮かべて尋ねてみた。





< 122 / 129 >

この作品をシェア

pagetop