開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
明と暗の交錯
明と暗の交錯
「えー?和田さんが見えるの?」
「ああ、渡すものがあってな。外でちょっと話済ませたら、家に連れてくるよ」
「わかったわ。奈緒子が戻ってきてる時に、タイミングがいいわね。あなたも久しぶりでしょう、和田さんとは…」
「うん。結婚式以来じゃないかな…」
奈緒子は急なことで、やや戸惑い気味の笑みを浮かべ、そばにいる娘のリカの頭を撫でて心の準備を計っているようだった。
家族にうまく説明を済ませた丸島は、定形外の大きめの封筒に収めた”ブツ”を手にし、サンダル履きで外へ出た。
***
「ああ、和田…。お待たせ。…鷹山さんも、わざわざすいません。これが例の現物です」
鷹山は挨拶を返し、定形外の封筒を受け取ると、中身をとりだし、手紙が”本物”で未開封になってることを確認していた。
「確かにお預かりします。早速、この手紙の対処を検討してみます。今後の連絡は和田さん経由ってことでよろしいんですね?」
「ええ。それでお願いします。こちらの連絡は毎日入れますので…」
丸島と和田は道路端でそれぞれ鷹山と握手を交わした後、駅に向かう彼を見送った。
「よかったんだな、鷹山さんに預けて…。最初に当たったとこでいきなりだったが…」
「うん、お前の目利きは適切だと思う。事案の特性ごとに対処法を考えてくれるスタンスは、今度の場合、やはり大事だと思うしな。ここはあの人に任せてみよう。…ああ、女房も奈緒子も待ってるんだ。さあ、入れよ」
「ああ、じゃあ、挨拶だけな」
すでに頭を切り替えていた二人は、どこか弾んだ足取りで玄関へと歩いていった。
***
「まあ…、お久しぶりねー、和田さん。さあ、どうぞ上がって下さい…。リカ、おじさんに座布団をおねがいね」
「はーい!」
「じゃあ、お邪魔します…」
「和田さん、ご無沙汰しています…」
「奈緒子さん!ホント、久しぶりだなあ…。ハハハ…、こちらがリカちゃんか。かわいいなあ」
「おじさん、こんばんわ」
「おお、小さいのに、ご挨拶が上手だね。はは…、こりゃ、丸島の顔が緩みっぱなしなのもわかるわ」
「ハハハハ…」
とてつもない”災厄”の手紙が届けられた丸島家…。
だが、この場にはそんなものとは無縁の、何とも微笑ましい空気で溢れていた…。
***
「それでは、自分はそろそろ…」
「あら…、和田さん、せっかくだからお食事でも召し上がっていけばよろしいのに…」
「はは…、今日は急だったんで、ウチのが夕飯作って待ってるもんで…。機嫌損ねると、アイツ、”長い”ですから(苦笑)。すいません、いずれまたゆっくりと…」
「まあ…、相変わらず和田さんは愛妻家ねー。羨ましいわ…」
そう言って、アカリは意地悪そうな顔つきで、隣に座っていた夫に目を向けた。
丸島は苦笑いの場面ながら、その顔は照れ笑いのようだった。
「ああ、奈緒子さん…。手嶋のやつ、よろしくお願いしますね。まだまだ青いとこがあるんで、いろいろ教えてやって下さい」
「いえ、こちらこそ、手嶋先生にはいつも教えてもらってます。生徒からも好かれてますし…」
「そうですか。アイツも奈緒子さんとは仲良くやってると言ってましたよ。まあ、丸島先生には素敵なご主人がいるだからなって、念押しはしてますから…」
奈緒子はいい笑顔で笑っていた。
そんな娘を目にして、丸島はアカリと顔を見合わせ何とも言えない表情で頬をほころばせている。
”何と暖かい空気なんだ…。丸島がようやく奈緒子さんと和やかに接せられる環境になったんだ。…クソッ、何としても逆恨みの呪いなんぞ、消し去ってやるぞ!”
満面笑みを浮かべ、丸島家と談笑していた和田の胸中には、そんな怒りの炎がメラメラと燃え盛っていた。
「えー?和田さんが見えるの?」
「ああ、渡すものがあってな。外でちょっと話済ませたら、家に連れてくるよ」
「わかったわ。奈緒子が戻ってきてる時に、タイミングがいいわね。あなたも久しぶりでしょう、和田さんとは…」
「うん。結婚式以来じゃないかな…」
奈緒子は急なことで、やや戸惑い気味の笑みを浮かべ、そばにいる娘のリカの頭を撫でて心の準備を計っているようだった。
家族にうまく説明を済ませた丸島は、定形外の大きめの封筒に収めた”ブツ”を手にし、サンダル履きで外へ出た。
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「ああ、和田…。お待たせ。…鷹山さんも、わざわざすいません。これが例の現物です」
鷹山は挨拶を返し、定形外の封筒を受け取ると、中身をとりだし、手紙が”本物”で未開封になってることを確認していた。
「確かにお預かりします。早速、この手紙の対処を検討してみます。今後の連絡は和田さん経由ってことでよろしいんですね?」
「ええ。それでお願いします。こちらの連絡は毎日入れますので…」
丸島と和田は道路端でそれぞれ鷹山と握手を交わした後、駅に向かう彼を見送った。
「よかったんだな、鷹山さんに預けて…。最初に当たったとこでいきなりだったが…」
「うん、お前の目利きは適切だと思う。事案の特性ごとに対処法を考えてくれるスタンスは、今度の場合、やはり大事だと思うしな。ここはあの人に任せてみよう。…ああ、女房も奈緒子も待ってるんだ。さあ、入れよ」
「ああ、じゃあ、挨拶だけな」
すでに頭を切り替えていた二人は、どこか弾んだ足取りで玄関へと歩いていった。
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「まあ…、お久しぶりねー、和田さん。さあ、どうぞ上がって下さい…。リカ、おじさんに座布団をおねがいね」
「はーい!」
「じゃあ、お邪魔します…」
「和田さん、ご無沙汰しています…」
「奈緒子さん!ホント、久しぶりだなあ…。ハハハ…、こちらがリカちゃんか。かわいいなあ」
「おじさん、こんばんわ」
「おお、小さいのに、ご挨拶が上手だね。はは…、こりゃ、丸島の顔が緩みっぱなしなのもわかるわ」
「ハハハハ…」
とてつもない”災厄”の手紙が届けられた丸島家…。
だが、この場にはそんなものとは無縁の、何とも微笑ましい空気で溢れていた…。
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「それでは、自分はそろそろ…」
「あら…、和田さん、せっかくだからお食事でも召し上がっていけばよろしいのに…」
「はは…、今日は急だったんで、ウチのが夕飯作って待ってるもんで…。機嫌損ねると、アイツ、”長い”ですから(苦笑)。すいません、いずれまたゆっくりと…」
「まあ…、相変わらず和田さんは愛妻家ねー。羨ましいわ…」
そう言って、アカリは意地悪そうな顔つきで、隣に座っていた夫に目を向けた。
丸島は苦笑いの場面ながら、その顔は照れ笑いのようだった。
「ああ、奈緒子さん…。手嶋のやつ、よろしくお願いしますね。まだまだ青いとこがあるんで、いろいろ教えてやって下さい」
「いえ、こちらこそ、手嶋先生にはいつも教えてもらってます。生徒からも好かれてますし…」
「そうですか。アイツも奈緒子さんとは仲良くやってると言ってましたよ。まあ、丸島先生には素敵なご主人がいるだからなって、念押しはしてますから…」
奈緒子はいい笑顔で笑っていた。
そんな娘を目にして、丸島はアカリと顔を見合わせ何とも言えない表情で頬をほころばせている。
”何と暖かい空気なんだ…。丸島がようやく奈緒子さんと和やかに接せられる環境になったんだ。…クソッ、何としても逆恨みの呪いなんぞ、消し去ってやるぞ!”
満面笑みを浮かべ、丸島家と談笑していた和田の胸中には、そんな怒りの炎がメラメラと燃え盛っていた。