開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
そして呼び寄せ夢が…
そして呼び寄せ夢が…
和田を交えた楽しいひと時を得た丸島は、その晩もリカと隣り合って寝た。
彼は布団に入るとすぐに眠りにつき、その寝息からは熟睡が伺えた。
そして‥。
***
”…ここは!”
丸島の視界には、濃い霧の中、柳らしき一本の木が倒れ、地面にくい込んでいる光景が写っていた。
”うすら暗い感じではあるけど、一体、昼なのか夜なのか…、不思議な光沢感だ…”
そして、その場に”音”はなかった。
彼は実質、二人いた。
視界と肉体らしき体を持つ者…、そしてその自分を眺める視界のみの自分だった。
後者は”それ”を何メートルだか何十メートルだか、さっぱり定かでない離れた場所に佇んでいるようだった。
一方、その視界に捉えられていた前者の自分は、倒れた柳の木の根元に腰を下ろしていた。
”それの手が地面を掘っている‥。掘りたくないのに、手が勝手にだ。その手、夢中になってどんどん深くまで…”
視界の丸島は、もう一人の自分を無言で実況中継をしていた。
***
”何かを掘り当てたのか!手にしたぞ…。二つだ!”
もう一人の自分の動作は止まらない。
手にした二つの丸い容器を必死になって開けようとしている。
だが、視界の自分にはわかっていた。
”彼”がそれを必死にやめたいという意思だということを…。
”止められないんだ!開けたくないのに、そこの自分を止められない。なんてことだ!やめろー!やめてくれー、そこの自分ー!!”
もはや視界だけを持つ丸島は大粒の涙をボタボタこぼしながら、声に出せない大声で泣きながら絶叫した。
しかし、無情にもその丸い容器は二つともあっけなく開けられた。
視界の自分には、容器の中身を取りだしている自分の後ろ姿しか見えないはずだったが、不思議なことに、”彼”の顔が視界の自分の脳裏にはくっきりと映っているのだ。
”やめてくれー!”
視界の自分と同じ言葉を叫び続けながらも、その作業をやめることのできない自分に、同じ顔で大泣きしている。
やがて、その自分の手には容器の中身が二つ…、いや、”二枚”が広げられていた…。
***
”見るなー!それを”読んじゃダメだー!!目を閉じろー!”
しかし、どんなにもう一人の自分に言っても、その自分は目を閉じることができず、二枚の手紙の文字が”彼”の涙が止まらない目に飛びこんでいった。
そして無情にも、彼は、その二枚の文字すべてを読まされてしまったのだ。
”ぎゃあーー!!”
音のない空間を破壊させんばかりの、”二人”から発せられた絶望に覆い尽くされた絶叫は空しく自分の聴覚に返ってくるのみだった。
そしてその後は、ただ静寂と静止がいつまでも続いた…。
***
”夢か!…あの夢だ。いや、まだ夢の中か…。あっ、体が動かない…”。皆はどうなんだ!リカは…、アカリは…!”
二人はいた。
眠っている。
だが、眠っているのはもう一人だ。
そう…、”彼自身”も、リカの隣でぐっすり眠っているのだ。
丸島は天井を向いて目をつぶっていたが、確実に”それ”は見えた。
真横から。
だが、”さっき”と一緒で、三人の寝顔も見えるのだ。
”本当のオレはどこにいるんだ!ひょっとして死んでいるのか…!”
彼は心の中でそう叫んでいたが、後段の結論ははっきり承知していた。
”死んでる訳はない…、今のオレは。これから自分で命を断つことを誓わされたんだから…。これからなんだ…!”
ここで一旦、彼の意識はふわっと消えた。
再び目覚めた時、その視界はすでに明るかった。
そして音もあった。
スズメのさえずる声も耳に入ってくる…。
”体も動くぞ!声もでる…。朝なのか…!”
彼は布団から半身を起こした…。
すると‥、その両手には何かが握られていた…。
和田を交えた楽しいひと時を得た丸島は、その晩もリカと隣り合って寝た。
彼は布団に入るとすぐに眠りにつき、その寝息からは熟睡が伺えた。
そして‥。
***
”…ここは!”
丸島の視界には、濃い霧の中、柳らしき一本の木が倒れ、地面にくい込んでいる光景が写っていた。
”うすら暗い感じではあるけど、一体、昼なのか夜なのか…、不思議な光沢感だ…”
そして、その場に”音”はなかった。
彼は実質、二人いた。
視界と肉体らしき体を持つ者…、そしてその自分を眺める視界のみの自分だった。
後者は”それ”を何メートルだか何十メートルだか、さっぱり定かでない離れた場所に佇んでいるようだった。
一方、その視界に捉えられていた前者の自分は、倒れた柳の木の根元に腰を下ろしていた。
”それの手が地面を掘っている‥。掘りたくないのに、手が勝手にだ。その手、夢中になってどんどん深くまで…”
視界の丸島は、もう一人の自分を無言で実況中継をしていた。
***
”何かを掘り当てたのか!手にしたぞ…。二つだ!”
もう一人の自分の動作は止まらない。
手にした二つの丸い容器を必死になって開けようとしている。
だが、視界の自分にはわかっていた。
”彼”がそれを必死にやめたいという意思だということを…。
”止められないんだ!開けたくないのに、そこの自分を止められない。なんてことだ!やめろー!やめてくれー、そこの自分ー!!”
もはや視界だけを持つ丸島は大粒の涙をボタボタこぼしながら、声に出せない大声で泣きながら絶叫した。
しかし、無情にもその丸い容器は二つともあっけなく開けられた。
視界の自分には、容器の中身を取りだしている自分の後ろ姿しか見えないはずだったが、不思議なことに、”彼”の顔が視界の自分の脳裏にはくっきりと映っているのだ。
”やめてくれー!”
視界の自分と同じ言葉を叫び続けながらも、その作業をやめることのできない自分に、同じ顔で大泣きしている。
やがて、その自分の手には容器の中身が二つ…、いや、”二枚”が広げられていた…。
***
”見るなー!それを”読んじゃダメだー!!目を閉じろー!”
しかし、どんなにもう一人の自分に言っても、その自分は目を閉じることができず、二枚の手紙の文字が”彼”の涙が止まらない目に飛びこんでいった。
そして無情にも、彼は、その二枚の文字すべてを読まされてしまったのだ。
”ぎゃあーー!!”
音のない空間を破壊させんばかりの、”二人”から発せられた絶望に覆い尽くされた絶叫は空しく自分の聴覚に返ってくるのみだった。
そしてその後は、ただ静寂と静止がいつまでも続いた…。
***
”夢か!…あの夢だ。いや、まだ夢の中か…。あっ、体が動かない…”。皆はどうなんだ!リカは…、アカリは…!”
二人はいた。
眠っている。
だが、眠っているのはもう一人だ。
そう…、”彼自身”も、リカの隣でぐっすり眠っているのだ。
丸島は天井を向いて目をつぶっていたが、確実に”それ”は見えた。
真横から。
だが、”さっき”と一緒で、三人の寝顔も見えるのだ。
”本当のオレはどこにいるんだ!ひょっとして死んでいるのか…!”
彼は心の中でそう叫んでいたが、後段の結論ははっきり承知していた。
”死んでる訳はない…、今のオレは。これから自分で命を断つことを誓わされたんだから…。これからなんだ…!”
ここで一旦、彼の意識はふわっと消えた。
再び目覚めた時、その視界はすでに明るかった。
そして音もあった。
スズメのさえずる声も耳に入ってくる…。
”体も動くぞ!声もでる…。朝なのか…!”
彼は布団から半身を起こした…。
すると‥、その両手には何かが握られていた…。