開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
その2


アキホの胴体をグルグル巻きにした柳の枝は、猛烈な熱を発し、彼女の体を焼きつけた。
ケムリも立たず、ジューっという音もなく、ただ静寂の中で、戸田アキホの華奢な上半身は焼け溶かされていく…。

”体が焼けてるーー!!死んじゃうよお…!”


くびれ柳の”気配”は容赦なかった。
柳の枝第二陣では、今度は彼女の顔面に向かって飛ばしてくる。

目を閉じることも叶わないアキホは、眼前に高熱スチーム機能を備えたムチのような枝が皮膚に触れる瞬間も直視を余儀なくされ、そのチャームフェースはほどなく柳の枝に吸い取られるかのように姿を覆われた。

”だすげでーー!!”

顔面が焼かれる、焼き尽くされる長く苦しい”時間”を全うし、彼女のその空間での”意識”は終わった。
第一夜目”それ”は…。


***


アキホの意識が”いつもの空間”に戻っていたのは、”ここ”での朝6時過ぎだった。

”…私は夢の中で殺されたの?体が焼け溶けて、顔も…”

ベッドの中で上半身を起こして、アキホは思わず顔に両手を当てていた。
確かに顔は”無事”であった。
無論、胴体も…。

”でも、焼かれた感触はそのままだ。顔も首の上からとれてる感じだよ。このままなんて無理だって。あれは夢なんかじゃない!”

そうであった…。
もはや第一夜を経た段階で、アキホにとっては”ここ”での自分が夢の中の自分と逆転していたのだ。

彼女の全身からは、すでに脂汗がどっと沸き出て、パジャマはベトベトになっていた。


***


日曜日のこの日…。
アキホは一通の手紙を書き下ろした。

その手紙は、ファンシーショップで買ったイラスト入りのコンパクトな封筒に折って挿入した後、宛名を手がきした。

”東京都○○区××町…、峰岸ナツヨ様”

夕方、4時半過ぎ…。
彼女はその封書をポストへと投函した。

そして‥、その日、彼女が家に戻ることはなかった。
いや、永遠に…。





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