開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
その3
野坂奈緒子が、現在勤務する浅香南高校の職員室に戻ると、同僚の物理教諭、手嶋浩一郎が帰り支度をしていた。
「手嶋先生…、これからですか…」
「ええ。礼服、まだクリーニング店に出したままなんで、受取ってからそのまま向かおうと思ってます」
「そうですよね、先週の水曜日でしたものね…。前の学校の生徒さんが亡くなられてお通夜に出られたのは…」
「まさか一週間もしないうちに、またなんて…。同じ学校の女子生徒が立て続けに自殺ですから。気分が滅入ります…」
手嶋はどっと重いため息をつくと、よっこらしょと言う感じ椅子から立ち上がった。
「あのう…、日曜日に亡くなった子、先週の子と仲よかったんですか?」
奈緒子は努めてさりげない言い回しで尋ねた。
***
「うーん…、特に親しいとかはなかったと思うんですよ。付き合うグループも別のようだったし」
「そうですか…」
「でも、自分が担任ん時は、二人供とても自殺するような感じじゃなかったんですよね。健康面も含めて…」
「先生…。この件、和田さんにはもうお話しされましたか?」
「いえ、今日の、戸田アキホという生徒のことはまだ…」
「そうですか…」
和田は奈緒子の死んだ父、丸島友也の親しい友人で、同じ高校教師だった。
そして、この手嶋は和田の教え子だった…。
***
「野坂先生…、家族を自殺で失ったご遺族の気持ちを考えると胸が裂かれる思いです。先生も、お父さんをああいった形で亡くされた訳ですし…。でも…、全部がそうとは限らないでしょうけど…、自ら死を選ぶ本人も、本当にどうしようもない選択だったってこともあるんじゃなかって…。ああ、すいません、無神経な話でしたね」
一年近く前には、奈緒子も父親を自殺で亡くしていた。
首を吊って…、それは突然…。
「いいえ。先生の優しい心根は承知してますから…」
奈緒子は少しだけ口元をほころばせ、穏やかな口調でそう言った。
”この人は、今もお父さんの死を引きずってる…。だけど、それは単に悲しいだとかの感情ではないような気がするんだ。よくはわからないけど…”
奈緒子とは職場で身近に接している手嶋は、父の死以降、彼女から微妙な変化を感じていた。
それは漠然としたものではあったが…。
野坂奈緒子が、現在勤務する浅香南高校の職員室に戻ると、同僚の物理教諭、手嶋浩一郎が帰り支度をしていた。
「手嶋先生…、これからですか…」
「ええ。礼服、まだクリーニング店に出したままなんで、受取ってからそのまま向かおうと思ってます」
「そうですよね、先週の水曜日でしたものね…。前の学校の生徒さんが亡くなられてお通夜に出られたのは…」
「まさか一週間もしないうちに、またなんて…。同じ学校の女子生徒が立て続けに自殺ですから。気分が滅入ります…」
手嶋はどっと重いため息をつくと、よっこらしょと言う感じ椅子から立ち上がった。
「あのう…、日曜日に亡くなった子、先週の子と仲よかったんですか?」
奈緒子は努めてさりげない言い回しで尋ねた。
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「うーん…、特に親しいとかはなかったと思うんですよ。付き合うグループも別のようだったし」
「そうですか…」
「でも、自分が担任ん時は、二人供とても自殺するような感じじゃなかったんですよね。健康面も含めて…」
「先生…。この件、和田さんにはもうお話しされましたか?」
「いえ、今日の、戸田アキホという生徒のことはまだ…」
「そうですか…」
和田は奈緒子の死んだ父、丸島友也の親しい友人で、同じ高校教師だった。
そして、この手嶋は和田の教え子だった…。
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「野坂先生…、家族を自殺で失ったご遺族の気持ちを考えると胸が裂かれる思いです。先生も、お父さんをああいった形で亡くされた訳ですし…。でも…、全部がそうとは限らないでしょうけど…、自ら死を選ぶ本人も、本当にどうしようもない選択だったってこともあるんじゃなかって…。ああ、すいません、無神経な話でしたね」
一年近く前には、奈緒子も父親を自殺で亡くしていた。
首を吊って…、それは突然…。
「いいえ。先生の優しい心根は承知してますから…」
奈緒子は少しだけ口元をほころばせ、穏やかな口調でそう言った。
”この人は、今もお父さんの死を引きずってる…。だけど、それは単に悲しいだとかの感情ではないような気がするんだ。よくはわからないけど…”
奈緒子とは職場で身近に接している手嶋は、父の死以降、彼女から微妙な変化を感じていた。
それは漠然としたものではあったが…。