開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
その4
「では、行ってきますんで…」
手嶋は小走りして職員室を出て行った。
”もしかしたら手嶋先生も、短期間に同じ高校の女子が自殺したことを、単なる偶然じゃないと疑問に感じてるのかしら…”
彼の後ろ姿を見て、奈緒子はふと心の中でそう呟いた。
「いやあ‥、しかし、手嶋先生もご苦労ですな。10日もしない間に、前任校の受持ち生徒二人の葬式とは…。しかも、どっちも自殺でしょう?…気が滅入りますな」
そこへ、ベテラン教師の武藤が奈緒子の横に寄ってきて、野太い声で話しかけてきた
「…」
奈緒子は、この教師には嫌悪感を持っていた。
教育理念はもとより、何しろおしゃべりで品性に欠けている点が、彼女にはどうしても受付けることができないようだった。
***
「でも、武藤先生…。短期間に同じ学校内で生徒の自殺が相次ぐっていうのは他でも結構起きてて、社会問題になってるくらいですからね。連鎖自殺とかって‥。何しろ、この前なんか、連鎖自殺の防止キャンペーンでテレビ出てPRしてた、イメージキャラクターの若い女性アイドル本人までが飛び降りで自殺ですよ」
すかさず、奈緒子の斜向かいで書き物をしていた、これまた年配の塩崎教諭が話に割って入ってきた。
「…特に都内の中学や高校では、手嶋先生の前赴任校以外でも、”この辺り”を中心によく耳に入ります。ですから、我が校とて他人事ではないでしょう」
「塩崎先生、物騒なことおっしゃらないで下さいよ。とにかく我が校は自殺などもってのほか、絶対にダメよで生徒への指導は徹底してますし…、ああ、野坂先生のいらっしゃる前で、これはとんだことを…。いや、失礼…」
「いえ…」
奈緒子はワープロを打ちながら、顔も向けずにそう流すだけだった。
***
この時、奈緒子の頭には、ある嫌な予期が降りたっていた。
”でも…、塩崎先生が言ったように、ごく狭い範囲での連続的な自殺はかなりの人に周知されているわ。やはり…、例の呪いの鎖は断ちきれていないのだろうか…”
呪いの鎖…。
それこそ、奈緒子の父、丸島友也が自ら死を決意しなければならなかった根本であったのだ…。
「では、行ってきますんで…」
手嶋は小走りして職員室を出て行った。
”もしかしたら手嶋先生も、短期間に同じ高校の女子が自殺したことを、単なる偶然じゃないと疑問に感じてるのかしら…”
彼の後ろ姿を見て、奈緒子はふと心の中でそう呟いた。
「いやあ‥、しかし、手嶋先生もご苦労ですな。10日もしない間に、前任校の受持ち生徒二人の葬式とは…。しかも、どっちも自殺でしょう?…気が滅入りますな」
そこへ、ベテラン教師の武藤が奈緒子の横に寄ってきて、野太い声で話しかけてきた
「…」
奈緒子は、この教師には嫌悪感を持っていた。
教育理念はもとより、何しろおしゃべりで品性に欠けている点が、彼女にはどうしても受付けることができないようだった。
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「でも、武藤先生…。短期間に同じ学校内で生徒の自殺が相次ぐっていうのは他でも結構起きてて、社会問題になってるくらいですからね。連鎖自殺とかって‥。何しろ、この前なんか、連鎖自殺の防止キャンペーンでテレビ出てPRしてた、イメージキャラクターの若い女性アイドル本人までが飛び降りで自殺ですよ」
すかさず、奈緒子の斜向かいで書き物をしていた、これまた年配の塩崎教諭が話に割って入ってきた。
「…特に都内の中学や高校では、手嶋先生の前赴任校以外でも、”この辺り”を中心によく耳に入ります。ですから、我が校とて他人事ではないでしょう」
「塩崎先生、物騒なことおっしゃらないで下さいよ。とにかく我が校は自殺などもってのほか、絶対にダメよで生徒への指導は徹底してますし…、ああ、野坂先生のいらっしゃる前で、これはとんだことを…。いや、失礼…」
「いえ…」
奈緒子はワープロを打ちながら、顔も向けずにそう流すだけだった。
***
この時、奈緒子の頭には、ある嫌な予期が降りたっていた。
”でも…、塩崎先生が言ったように、ごく狭い範囲での連続的な自殺はかなりの人に周知されているわ。やはり…、例の呪いの鎖は断ちきれていないのだろうか…”
呪いの鎖…。
それこそ、奈緒子の父、丸島友也が自ら死を決意しなければならなかった根本であったのだ…。