開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
呪いマニアの正体④



「お母さん…、自分も謝罪させてもらいます。私は丸島の行為をアドバイスしていたんです。昨年、則人さんが自殺したかどうかを匿名でこちらへ電話で確認したのも自分です…。申し訳ありません。この通りです」

和田も玄関先に立ちあがって、重な謝罪を鬼島の母親に申しいれた…。

「まあ、お二人とも、もうおかけください…」

母親は先ほどまでとは明らかに違う、とても穏やかな口調で二人にそう投げかけた。

”丸島…、この重大局面を奈緒子さんに助けられたよ…”

和田は胸の中で故丸島友也にそう伝えていた…。


***


その後…、和田と奈緒子は、丸島と鬼島則人間でおこった、その後の客観的事実を鬼島の母親に伝えた。
持参した手紙類を添えて…。

すると…。

「…お二人の説明、よくわかりました。息子の行った行為は悪魔の所業です。私が謝って済むことではありませんが、今度はお二人にお詫びします。…ごめんなさいね…、どうか、あの子を許してやって下さい…。うっ…、ううっ…」

なんと鬼島の母親は、玄関框に正座したまま、二人に深々と頭を下げ、最後は嗚咽してしまった…。


***


「いや、まあ…、お母さん、その辺で…」

さすがにこのリアクションには和田も奈緒子も呆気にとられ、思わず二人は立ちあがって、母親の体に手を添えていた。
やや慌てた表情で…。

「私は息子のやっていたことは、よく承知してはしていません。でも、母親として、どこか薄々と言う感じはずっと持っておりましたが、それを止められなかったんです。今思うと、やはり世間的には狂っていました。ですから、今日は”こういうこと”だったのかと分かりました…」

「お母さん…」

もう和田と奈緒子は、今日の目的を忘れるくらい、この予想外の局面に動揺していた…。






< 69 / 129 >

この作品をシェア

pagetop