開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
呪いマニアの正体⑥


「あのう…、お母さん。それって、入って来たんですよね、5000万円…?」

「ええ。すんなりと」

「…」

ここで、和田と奈緒子はなにをどう言いていいのやら、思案に悩んだ。
しかし、そんな二人の胸の内を察したかのように、鬼島の母は自分から次を切りだすのだった。

「ちょっと回りくどい話になりますが、息子は先ほど言った、特技なし、趣味なしで…。それは子供の頃から何かをやり始めても、その先に行かなかったせいなんですよね。友達に野球チーム誘われて始めたはいいが、何かにかこつけてすぐやめたり、ギター買って通信教育とかも途中で断念しちゃって…」

「…」

再び二人は言葉が出なかった。
これは同じ教育者という立場からだったようだ。


***


「どうやら、あの子は幼少時からそんななんで、日々エネルギーを内に秘める癖が知らず知らずに培われていったようだと…。今からすればそう思えます」

「では、彼はその内向的にため込んでいったエネルギーを、どんなことに…」

「”念じる”心に持っていったようですね。結果的に。それも、人を不幸にさせるという方の…。何かを達成させるという目的の方には、あの子、どうしてもエネルギーが出せなかったようです。ですから結局、何かを失敗させるとか、ダメにさせるといいったそっちに自然と向かっていったようで。そう言う念じ対象なら、ある時期を境に魔法のようにエネルギーを使いこなすになったんと思うんです…」

「じゃあ、事故をおこさせるとかも可能だったということですかね?」

「はい…」

”参った…!”

和田と奈緒子はここで、ひとつの到達点を迎えるのだった…。




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