開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
呪いマニアの正体⑦



「そのような類のことをあの子から感じ取ったのは、今振り返れば、則人が高校に入った頃です。最初は、憎たらしい友達が恋人にフラれることを念じたら、その通りになったとかそんな程度のことで、私も聞き流してました。あの子からしたら、生まれて初めて手にした”特技”が成果を出せたとうことで素直に喜んでるようでして…。さほど気にも留めなかったんですよ」

母親は何しろ真摯に話していた。
和田と奈緒子も、そんな彼女の”告白”には、真正面から耳を傾けていた。

「…”それ”がどんどん上達していってるとかって、私には嬉しそうに言うんですよね。そのうち高校を卒業して、出版社に就職して2年程で主人が事故死しましたが、私は特別、則人が念じたのだとかは思いませんでした。その時は…」

「では、今は違うんですね、お母さん…」

和田は敢えて単刀直入に尋ねてみた。


***


「はい。あの子がそう念じて、義理の父を事故死に導いたと確信しています」

再び和田と奈緒子は顔を向け合い、互いの驚嘆ぶりを確かめあった。

「あのう…、息子さんは義理のお父さんをそうしたと、お母さんに告げた訳ではないんですね?」

「はっきりとは…。でも、自殺する数年前からは、自分でそれなりにほのめかすようなことは、色々と私に告げてましたから」

「事故死の件では、正確にどんな表現でお母さんに言われたんですか?」

「今の僕なら、”特技”を使えばやれることだよと…」

「!!!」


***


和田と奈緒子には衝撃極まりない一言ではあったが、一方の母親は妙な程平静でその口調が変わることはなかった。
その意味するところが、この後、二人にとってのキーポイントとなる…。

「その頃は、もう自分は人を呪い殺すこともできるとかって口にしてましたが、それは意識的だったと思います…」

母親がここで一息ついたところで、すかさず奈緒子がこう言った。

「お母さん、続けて下さい」

それを受け、母親は奈緒子の顔を見つめながらゆっくりと頷いた…。





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