開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
その4


「じゃあ、国上さん…、鬼島はやはり…」

和田は思わず、身を乗り出していた。

「この白封筒はその名の如く、”挑発状”ですよ。今、お二人が母親から聞いた話を伺って、確信に至りました。…言わば、これは、犯罪マニアが警察に犯行声明を出し、その通り実行して挑発・挑戦する図式です。愉快犯とも言えるが、その場合、鬼島は最強・天才の範疇でしょうな」

『和田さん、国上さんもやっぱり…』(奈緒子:小声)

『ええ…。我々と同じ捉え方だ。なら、要はあの中身だ…』(和田小声)

和田と奈緒子が小声でそうやりとりしてる間に、その疑問は鷹山が国上に投げかけていた。

「国上さん、じゃあ、その中身は…」

「おそらく、我々が彼の仕掛けた呪いを断つ手段とかへのヒントみたいなものが記されてると思いますよ」

国上は躊躇なく答えた。


***


”ヒントか…!あり得る…。鬼島は、生前自らの命を断つことで負のパワーを最大級に生かす方策を綿密に練り、呪いの連鎖という壮大な実験を挙行させた。高校時代の教師、丸島友也への逆恨みを根拠とする開けずの手紙を送りつけることで…。この封筒は、その呪いの一次念じ手が自分であることを突きとめ、呪いを断ちきろうと立ちはだかる挑戦者に渡すために奴が用意したものなんだ。であれば、中身はそういうことかもしれんぞ…”

和田は国上の口から出た”ヒント”という言葉で、頭の中が一気に整然となった。

「それでは、開封しましょう。重い陰の気は放っていますが、封を切って呪いがかかるということはありません。念じ主さんにとっては、この中に入っているものを見た人間にここで死なれては困る訳ですから」

これには他の3人もやや口元を崩していた。





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