開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
その4


ビュビュビュン、ビュビュビュン、ビュビュビュン…。

”ああ、やってる、やってる…”

この日の昼休み、奈緒子は屋上に出た。
右手に縄跳びを持って。

「先生…、私も混ざっちゃっていいですか?」

奈緒子は小走りして、縄跳びに興じる7,8人のグループに走り寄って行った。

「ああ、野坂先生…。どうぞ。今日は気候がちょうどいいから、気持ちいですよ」

手島は奈緒子に二重跳びしたまま、笑顔でそう答えた。

「先生、スカートのまま来てくれればよかったのに…」

「バカ!お前は何言うとるんだ。さあ、みんなも野坂先生にも取れないで二重100回連続クリアしろよー」

「うぉー、行くぞー!」

手島と輪になって二重跳び100回チャレンジグループの1年男子6人は奈緒子側に入って、俄然、気合いが入っていた…。

ビュビュビュン、ビュビュビュン、ビュビュビュン…。

”アハハ…、気持ちいわー!”


***


「いやあ、野坂先生、12回いきなりってのはスゴイですよ」

「たまにはいいですね。程よく汗かくのって、清々しいわ。…それで先生、明日のことですが…」

「ええ。なんか、すいませんね、この学校の生徒じゃないのに…」

「いいえ。手島先生は現地に行っていただけるんですから。やはり、くびれ柳の施術中は三浦さんには誰か付いていないと…。まあ、家の人もいらっしゃるし、私がいても何ができるって訳じゃありませんが…」

「いえ。今の彼女には、やはり家族以外の人がそばにいてやることは必要ですよ。それに先生は、今回の施術をひと通り理解されてるし。もし何かあれば、即連絡を取り合って…」

「わかりました。先生も、お気をつけて…」

「まあ、僕は校門の見張りですから…。でも何が起こるかわからないでしょうし、気を抜かないで頑張ります…」

二人は屋上のフェンスに寄りかかり、汗をタオルで拭いながら、”翌日”の申し合せに余念がなかった。

”いよいよ明日だわ。国上さんの施術がうまく行くといいけど…”

奈緒子は不安感の中にも、どこか体が奮い立つような気持ちを抑えきれなかった。





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