鈍くてかわいい私の親友。
そんな咲玖を支えたのが、同じクラスの九竜だった。
「蒼永!」
「俺が持つよ」
「大丈夫だよ」
「危ないからダメ」
そう言って九竜は私が持っていた半分も軽々と持ち上げた。
「これ、どこに運べばいいの?」
「職員室だけど…」
「わかった」
「えっ、いいの?」
「うん」
「あり、がとう…」
お礼を言いながら、内心ではやっぱり男子に構ってもらいたいアピールなんじゃない、って思っていた。
本当に私はひねくれていたと思う。
そうじゃないとわかったのは、九竜が咲玖にだけ優しいと気づいてからだった。
九竜は男子の中でも運動神経が断トツで良く、女子の中で人気が高い。
だから九竜と話したがる女子はたくさんいるけど、咲玖以外には誰に対しても塩対応。
いつも咲玖にべったりだ。
「あなたたちって、なんでいつも一緒なの?」
なんとなしに尋ねてみたら、その返答にものすごく驚いた。
「わたしと蒼永はいいなずけなの」
「いいなずけ…?」
「大人になったらけっこんするんだって」
「えっ!?」
結婚って、小学生なのに!?正気なの!?
「なんかそうゆうことになってるんだよね」
「うん」
授業で何となく教わっていたので、昔の人は自分の意思で結婚できなかったことは知っていた。
だけど、この令和の時代にそんなことってあるの…?
何より驚いたのは、二人が政略結婚を受け入れていることだ。