鈍くてかわいい私の親友。
「結婚って自分で決めるものでしょ?勝手に決められていやじゃないの?」
咲玖はちょっと小首を傾げてから、答えた。
「うーん、でも蒼永と一緒にいるの楽しいから、いいかなって」
そ、そうゆうものなの…?
「俺は、咲玖じゃないといやだから」
「蒼永はわたし以外の人ともしゃべったら?」
「別にいい」
咲玖はあんまり深く考えてなさそうだけど、九竜は多分本気で咲玖が好きなのね。
正直小学生で婚約するのは理解できないけど、なんとなくこの二人のことはいいなと思った。
なんか独特というか、二人ともマイペースで。
周りにどう思われようとか、あんまり気にしてないんだろうなって。
今時特殊な許嫁なんて、周りに理解されそうにもないのに。
それと、話すうちに咲玖が計算なんてしていない、ものすごく素直な性格だというのもわかってきた。
いつもかわいい格好をしているのも、ただ自分がかわいいと思って好きなものを着ているだけらしい。
ぽわぽわしているように見えて、意外と自分の芯をしっかりと持っている。
それからは段々と咲玖と一緒にいるようになった。つまり、九竜とも。
「桃ちゃん!これ、おみやげ!」
「おみやげ?どこか行ったの?」
「蒼永ん家と一緒に温泉行ってきたの。はい、湯けむりにゃんこ」
咲玖がくれたのは、温泉に入っている猫のマスコットだった。
なんだか絶妙にぶちゃいくね…。
「じゃーん!おそろいなの!」
咲玖は嬉しそうにぶちゃいくな猫のマスコットを見せる。よく見ると頭に乗せているタオルが色違いだ。
私がピンクで、咲玖が水色のタオル。
「ありがとう…でも逆じゃない?」
「逆?」
「タオルの色よ。私はピンクって柄じゃないと思うけど」
「なんで?ピンクは桃ちゃんの色だよ」
無垢な瞳でそう言ったのが、やけに印象的だった。