鈍くてかわいい私の親友。


* * *


それから私に対する嫌がらせも、咲玖に対するやっかみもなくなった。
多分やっかみは抜け目のない、咲玖の許嫁がお灸を据えたんだと思う。もちろん咲玖はまったく知らない、知らなくていいけど。

意外に察しがいいところもあるんだけど、何故か九竜のことに関しては鈍ちんなのよね。


「桃ちゃん!今日ね、蒼永ん家でバーベキューするの。桃ちゃんも一緒にやろ」
「それ、私邪魔者じゃない」
「そんなことないよ!蒼永ママも呼んでいいよって言ってたもん!」
「…邪魔よねぇ?」


私は九竜に尋ねたが、意外な返事が返ってきた。


「別にいいよ」
「えっ!?なんで?」
「春日井がいると咲玖が喜ぶし…」


とか言ってるけど、若干不満そうなのが見え見えなのよ。
この男はもう少し隠したらどうなのかしら…。言葉と表情が合ってない。


「桃ちゃん、お願いっ」


咲玖はキラキラした瞳で見つめる。
本当なら、こういうおねだりは苦手。姉の使う常套手段、あざとい上目遣いってやつ。
でも、咲玖は違うのよね。純粋に私に来てほしいと思ってるだけなのよね。


「わかった、お邪魔するわ」
「やったぁ!」


女同士なんてめんどくさい。そんな風に思っていたけど、咲玖は別。
こんなにかわいい親友、他にいないわよね。

友達も案外悪くないと思った私が、恋も悪くないと思えるようになるのは――また別の話である。



fin.


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