隠れ御曹司の愛に絡めとられて
「ふふ。亜矢さんって、酔うと可愛くなるよねぇ」
「か、可愛くなんか……」
同期の美紀とよく一緒に飲むけど、美紀からはいつも「亜矢は酔うと笑い上戸になるね」と言われてる。
ケラケラ笑ってると言うよりは、ふにゃふにゃ笑いながら人の話をじっと聞いてる変則的なタイプだって言われた。
変則的ってなんだ。
それに、ふにゃふにゃって……。
酔った自分を客観的に見ることは難しいから美紀の言葉を信じるしかないけど、さすがに酔った私が可愛いと言われたことはないし、自分自身ではそう思えない。
ふわふわする頭でそんなことを考えてる間も彼の右手は私の頬に触れたままだ。
手、あったかいね。
メープルくんは、酔ってないの? その手の温かさで?
「……亜矢さん、ダメだよ、そんな可愛く笑ってたら。キスしたくなっちゃうでしょ……?」
「……え?」
「もう……」
いやいや、もうって言いたいのは私の方なんだけど……?
とか思っている間に、頬にあったはずの手がスルリと私の横髪を梳いて、いつの間にか後頭部へと添えられている。
「え、」