隠れ御曹司の愛に絡めとられて

私が言葉の先を続ける前に彼の顔が近づいてきて……。

優しく唇が合わせられ、すぐに離れていく。

驚いて身体が固まってしまっている間に、もう一度唇が重ねられた。

私の反応を探るような、優しく重ね合わせるだけのキス。


されるがままに彼の唇を受け止めてしまっていることに、自分でも驚く。

けれど、嫌じゃない……。

だけど、だからこそ、困る……。

触れるだけのキスが少し心地良いと思ってしまう……。

そう思いながらも、触れるだけなのがもどかしい、とも思ってしまう……。


「亜矢さん……」


唇が軽く触れ合ったままで名前を囁かれ、くすぐったい、もどかしい、じれったい……。

触れるだけのキスでは物足りない……。

どうしてそんな風に思ってしまうんだろう。


私が黙ったまま特に抵抗しないのを彼がどう解釈したのか、触れるだけだったものが少しずつ熱く甘いキスへと変わり始める。

思わず熱に流されそうになって――。

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