隠れ御曹司の愛に絡めとられて

「え、あの、ちょっとっ」

「ちゃんと食べてちゃんと眠らなきゃだめだよ」

「分かった、分かったから……」


手を放して、と言おうとして彼を見ると、珍しく怒った表情で……言えなくなった。

そんな表情は初めて見る。


近くに停めてあった彼の車に乗せられて、また彼の家へ……。

家に着くなり、「すぐ作るからちょっとだけ待ってて」と言われてソファに座らされた。

ふかふかで座り心地が良すぎて、なんだか眠たくなってきてしまう。

いかんいかん、と頭を振ってなんとか眠気を吹き飛ばそうとした瞬間、私のスマホが鳴り出した。

そう言えば音を切るのを忘れてた。

画面には見飽きた電話番号が表示されている。

私は通話を終了するボタンを選択したあとマナーモードへと切り替えて、バッグへと放り込んだ。


「あれ? 電話、出なくて良かったの?」

「……うん、いい」

「……ふぅん?」


電話の主は孝治だ。

もう彼からの電話に出る気はない。

一日に何件も来るメッセージ、何度もかかってくる電話に、私は本当に疲れ果てていた。

< 125 / 227 >

この作品をシェア

pagetop