隠れ御曹司の愛に絡めとられて
「え、あの、ちょっとっ」
「ちゃんと食べてちゃんと眠らなきゃだめだよ」
「分かった、分かったから……」
手を放して、と言おうとして彼を見ると、珍しく怒った表情で……言えなくなった。
そんな表情は初めて見る。
近くに停めてあった彼の車に乗せられて、また彼の家へ……。
家に着くなり、「すぐ作るからちょっとだけ待ってて」と言われてソファに座らされた。
ふかふかで座り心地が良すぎて、なんだか眠たくなってきてしまう。
いかんいかん、と頭を振ってなんとか眠気を吹き飛ばそうとした瞬間、私のスマホが鳴り出した。
そう言えば音を切るのを忘れてた。
画面には見飽きた電話番号が表示されている。
私は通話を終了するボタンを選択したあとマナーモードへと切り替えて、バッグへと放り込んだ。
「あれ? 電話、出なくて良かったの?」
「……うん、いい」
「……ふぅん?」
電話の主は孝治だ。
もう彼からの電話に出る気はない。
一日に何件も来るメッセージ、何度もかかってくる電話に、私は本当に疲れ果てていた。