隠れ御曹司の愛に絡めとられて
「……あ、おはよう、亜矢さん。よく眠れた?」
「……おは、よう」
リビングのソファから起き上がったメープルくんは、朝から可愛さ全開の笑顔で私に挨拶をする。
その様子から見るに、前回と違って彼は今回ソファで寝たらしい。
罪悪感が込み上げてきて、私はすぐに頭を下げた。
「あの……ごめんね、ベッド……」
「ああ、ううん、大丈夫。亜矢さんすごく疲れてたみたいだから一人で寝た方が良いだろうなって思って」
「……ごめん」
「ふふ。大丈夫だって。僕わりとどこでも寝れちゃうんだよね~。キッチンに持ち込んだ椅子とかで寝たりとかね、しょっちゅうだから」
そう言っていつものふわふわ笑顔。
相変わらず朝から穏やかだね、きみは。
なんだか安心してしまう。
昨晩、彼が作ってくれた夕食を平らげた私は、彼が片付けをしている間にソファで眠ってしまったらしい。
ベッドで眠るよう声を掛けてくれて、私もそれに応じたらしいんだけど……全然記憶にない。
用意してくれていたパジャマに着替えたのも私自身が自分で着替えたのだそうだけど、それも記憶になかった。
え、じゃあ私、メープルくんの前でお着替えしちゃったってこと?
うわ……、恥ずかしすぎる。
私はうつむいて熱くなる顔を隠しながら「あの、私の服は……」と問うと、「ごめん、またクリーニングに出しちゃった」と返ってきて……。
やっぱりそうだよね? そうだと思った。
どうしよう、会社に間に合わない。
と言うか、パジャマのままでは自宅にも帰れない、どうしよう……。