隠れ御曹司の愛に絡めとられて
ずっと一緒にいたいから
――翌朝。
何かが顔に触れる気配で、徐々に覚醒されていく。
……え、なに?
まだ全然頭が回らなくて、そう言えば昔よく犬のメープルが私の顔を舐めて起こしてくれてたな、なんて懐かしく思い出す。
「……ん」
けれどもいま私の顔に触れているそれは、もっとサラリとした感触で……。
「おはよ、亜矢さん」
「……」
「朝だよ?」
「う、ん……?」
「ふふっ、朝から可愛いー」
「……」
……いや、あのね?
朝から可愛いのは、カエデくん、あなたなのですけど……?
そう口にしそうになるのを我慢して、私はのそりと起き上がる。
どうやら私の顔に触れていた〝何か〟は、カエデくんの手だったらしく……。
私の額や頬を撫でたり、鼻をツンツンと突いたり。
好き勝手に私の顔を弄んでくれたようで……。
「……カエデくん」
「うん?」
「私の顔は、オモチャじゃないんだけど」
「うん」
「……いや、あのね?」
「亜矢さん。朝ご飯、出来てるよ?」
「誤魔化さないで」
「ふふ、ごめん。だって亜矢さんが可愛いんだもん」
「……もうっ」
〝可愛い〟と言われただけであっさりと許してしまうのは、私なんかよりカエデくんの方がずっと可愛いからだ。
彼の可愛さにすっかりやられてしまっている私は、彼がふわふわと笑うだけでうっかり色んな事を許してしまう。
それにしても、どこからどう見れば私なんかのことが可愛く見えるんだろうか。
彼の思考回路はナゾばかりだ。