隠れ御曹司の愛に絡めとられて
「あ、カエデくん。シャワー、借りてもいい……?」
「うん、何でも好きに使ってくれていいよ~」
「ありがと」
「だって、もう亜矢さんの家も同然だからね?」
「……はぁ???」
「え。だって、一緒に住むでしょ? 別々に住む意味、ないでしょ?」
「……意味、って」
「それはまた後で話そ。とりあえずシャワーどうぞ。晩ご飯作ってくるね」
「……」
一緒に住む……?
あまりにもくすぐったい気持ちになりながら、カエデくんが部屋から出て行くのを見送った。
相変わらず豪華な浴室でシャワーを浴びながら、私はさっきの会話を考えていた。
そりゃあ、一緒に住めば私にはいっぱいメリットがある。
毎日カエデくんの作る美味しいご飯が食べられる。
会社にもすごく近い。
何より、いつもカエデくんと一緒に過ごせる。
あのふわふわの笑顔を見て、毎日しあわせになれる。
でも……。
私と一緒に住んで、カエデくんに何かメリットある?
何もないんじゃないかな。
与えてもらうばかりで、私はカエデくんにしてあげられるものが何もない。
そんなの公平じゃない。
そもそも私のどこが良いのか、さっぱり分からない。
それは過去に付き合ってきた人たちにも言えるし、彼らがそれを証明しているとも言える。
なぜなら、結局みんな私に愛想が尽きて別れているのだから……。
そう考えるとますます「私なんかどこが良いんだろう?」と思ってしまう。