隠れ御曹司の愛に絡めとられて
「おかしいおかしいっ。私の意見も聞こうよ!?」
「いいじゃん。一緒に住んだ方が、毎日こうやってイチャイチャ出来るよ?」
布巾でテーブルを拭いていた私を、カエデくんが後ろからギュッと抱きしめる。
耳元で「ね、どう?」と甘い声で囁かれて一気に体温が上昇した。
心臓に悪い。
普段はその辺でふわふわ可愛さを振りまいてるのに、こうやって一気に距離を詰めて密着してくるの、本当にズルい。
「一緒に、住もう?」
「でも……」
「亜矢さんは何が気になってるの? 僕と一緒に住むの、不安?」
「そ、そうじゃないけど……」
「ん?」
後ろから私を抱きしめたまま顔をのぞき込まれ、すぐ真横にカエデくんの綺麗な顔が迫る。
「気になってることがあるなら遠慮なく言って?」
「それは、その……」
「ん?」
「私、カエデくんの足手まといにしかならないし……」
「え、なんで?」
「だって……料理出来ないし」
「だからそれは僕がやるってば」
「それに、仕事を優先しがちだし」
「体を壊さない程度なら問題ないよ? もちろん僕のこともちゃんとかまってね?」
「そ、それはまぁ、もちろん……」
「ふふっ。はい、じゃあ決まりっ。えへへ、やったー」
「……」