隠れ御曹司の愛に絡めとられて
さっきのことを蒸し返されているのだと気づき、私はムッと口をへの字に曲げた。
意地が悪い。
でも……、そんなところさえも、可愛くて好きだと思う。
ダメだ、私、そうとう彼にやられてる。
カエデくんの意地悪な誘いにのってあげることにした。
垂れ下がる彼の前髪をぐいとかき上げるようにしてそのまま手を後頭部へと滑らせて彼に抱きつくように上体を起こし、カエデくんに口づけたままゆっくりと重心を移動させ、カエデくんを押し倒す。
彼の唇を舌でなぞるように舐めると意図を察して彼の唇が薄く開き、私を招き入れた。
彼の舌を絡め取り、口腔内をじっくりと味わう。
受け身のキスもドキドキするけれど、自分から仕掛けるキスはもっと刺激的だ――。
「ふふ、僕の方が襲われてる」
「襲って欲しかったんでしょ?」
「ん、亜矢さんになら襲われたい~」
「……ばーか」
一緒に住めば、毎日こんな風に楽しいんだろうか。
だったらもう今日から一緒に住むのでも良いかもしれない。
心の準備だとか、何かの順番だとか、そんなものは必要ない、きっと。
楽しいことばかりじゃないだろうけど、それでも、カエデくんとなら、ずっと一緒にいたいと思えるから。
嬉しいこと楽しいこと苦しいこと悲しいこと――どんなことも二人で共有したいと思えるから。