隠れ御曹司の愛に絡めとられて

言葉の途中でカエデくんの口づけに遮られて、その先が続けられなくなった。

まただんだん呼吸が乱れていく。

途中で何度か「ねえ、待って」と言った。

けれど、私の口から聞きたいのはそれじゃないとばかりに、カエデくんの手が、唇が、私を攻め立てる。

声を我慢しているわけじゃなかったけど、ここまで来れば半分意地みたいになってきて、必死に声を出さないように息を詰める。

カエデくんの右手も、左手も、唇も、私の〝良い〟ところばかりを攻めるから、頭がおかしくなりそうだった。


「亜矢さん……」


耳元で名前を囁かれて、思わずかぶりを振る。


カエデくんの声は、安心する。

カエデくんの声を聞くと、胸の奥がギュッとなる。

カエデくんに名前を呼ばれると、しあわせな気持ちになる、そして、心が高ぶる――。



――その後、私が声を上げるのを我慢できたのかと言うと、それは無理なことだった。

ところどころ記憶が飛んでいる。

途中、乱れる呼吸を整える時間を与えてくれる優しい悪魔が、艶っぽい顔で私を見下ろしていたことを朧げに覚えている。

私が途切れ途切れに彼の名前を呼ぶと、カエデくんは妖しげな色香を振りまきながらふわりと笑んでいた。

さんざん啼かされて、何度も何度も上り詰めて……。

ひとつに溶け合った歓びに震えた――。
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