隠れ御曹司の愛に絡めとられて
あなたのお仕事
――外が明るさを取り戻し始めている。
もう朝か……。
起きてしまうのが惜しいほどの心地良い気だるさに包まれての目覚めだ。
その気だるさの元を私と共に作り出した相手は、隣ですやすやと眠っている。
可愛い寝顔しちゃって……。
昨夜のあの妖艶な姿とはあまりにも違いすぎでしょ。
隣で眠るカエデくんの寝顔をまじまじと見つめる。
びっくりするほど整った顔だな、と改めて思う。
緩くウェーブしている彼の髪にそっと指を通すと、指からふわりとすり抜けた。
その次の瞬間、寝ていたはずの彼が、ふふ、と笑う。
「……ごめん、起こした?」
「ん、亜矢さんに髪触られるの、好きかも……」
「ええ?」
「ふふ、もう一回やって……?」
「……もう」
さっきと同じように彼の髪に指を通して梳くと、柔らかい髪が私の指からこぼれ落ちる。
カエデくんは嬉しそうに笑っていて、ああなんだかしあわせな朝だな、としみじみと思う。
ずっとこうしていられたら、とも……。
「ふふっ、しあわせな朝だね~」
「……ええ?」
いま私が思っていたことと同じ事を彼が口にしたことに驚く。
「ずっとこうやってたいなぁ」
「……そうだね」
「あー、仕事、今日も休もうかなぁ」
「え? ダメだよ! 今日って仕事なの? ちゃんと行って! ほら、起きて起きて!」
「ええ~、やだ~」