隠れ御曹司の愛に絡めとられて
「ねえ美紀。これって、“私と食事”って言うより、“合コン”だよねぇ???」
「ごめんってば! だって亜矢、浮気してた最低な彼氏と別れたんでしょー?」
「……」
「新しい彼氏見つけて、あんな浮気男、早く忘れちゃいなよ!」
「別に、もともと未練なんて……」
どうりで会社を出る前に念入りに化粧直しをさせられたわけだ。
完全にはめられた。
無意味だと分かっているけれど、私はもう一度、隣に座る美紀をジロリと睨んだ。
私は合コンと言うヤツが大の苦手で、美紀にも散々それを言ってきたので、好きじゃないことを知っているはずだ。
それなのにだまし討ちだなんて……ひどいよ美紀!
やっぱりもう一言だけでも文句を言おうと口を開きかけて、ふと、私の目の前の席へと目が行く。
そこは空席で……。
女が4人に対して、男が3人。
あっちが一人足りないなら、私が帰ればちょうど良いのでは……?
これは名案だ、どうしてすぐに気づかなかったんだろう。
思いがけず合コンに連れてこられて、よほどテンパっていたらしい。