隠れ御曹司の愛に絡めとられて

「なに食べる~?」


渡されたメニューブックには美味しそうなランチメニューやスイーツがたくさん載せられていて、思わず目移りしてしまう。

悩みながらもメニューを決めて「じゃあ、これで」とお願いすると、カエデくんは「かしこまりました」と恭しく頭を下げた。

それがまたとても素敵で、こんなイケメンな店員に接客されたら女の子たちはイチコロなんだろうなぁ。

彼がモテまくってる様子があまりにも簡単に想像できてしまって、私は思わず眉間にシワを寄せた。


そんな風にひとりでモヤモヤしてる間に開店時間になったらしく、スタッフの「いらっしゃいませ」と言う声と共にたくさんの女性客が店内へと入って来た。

途切れることなく次々と入ってきてお店はあっという間にいっぱいになり、かなり人気のお店なのだと初めて知った。

この辺りは普段まったく来ないし、たとえ話題のお店があったとしても方向音痴の私には一人で足を運ぶのは難しい。


カウンター席も、カエデくんが座る予定の私の右隣を除いて、すぐに埋まってしまった。

急に満席になってしまった店内を観察していると、カエデくんが私の頼んだランチプレートを持ってやって来る。


「お待たせ致しました」


普段とは違う余所行きの声と表情で私の前にランチプレートを置くカエデくん。

ふーん、いつもこんな感じで仕事してるんだ……。

なんか、いいね。

ふわふわ笑ってるカエデくんも可愛くていいけど、こうやって凛々しい感じのお仕事モードも、本当に素敵だ。

< 194 / 227 >

この作品をシェア

pagetop