隠れ御曹司の愛に絡めとられて
お昼休憩の時間が終わり、午後からの仕事を開始する。
会議は一時半から。
準備はすでに午前中に終えていて、あとは会議開始を待つだけだ。
段取りを確認し終えるのと同時に、エレベーターが到着音を鳴らす。
子会社の役員が早めに来て本社役員に挨拶することは珍しくないから、きっと今日の会議の参加者のひとりが来たのだろう。
私と若月ちゃんはすぐに立ち上がって、来訪者を迎える。
「……え?」
思いもかけない人物の登場に思わず間抜けな声を出してしまったのは、もちろん私だ。
「カエデ、くん……?」
エレベーターから降りてきたのは、今朝私を駅まで送ってくれたカエデくんだ。
いつものラフな格好ではなくビシッとスーツを着て、普段はふわふわの髪も今日はきちんとセットしている。
顔立ちが綺麗すぎるのも相まってあまりにも素敵で、私は思わず見惚れてしまった。
「楓さん、いらっしゃいませ。お早いですね」
「結麻ちゃん、久しぶりー。先に伊吹に会っておきたくて、ちょっと早めに来たんだ」
「そうでしたか」
え? 待って待って? 何、どう言うこと?
若月ちゃんとカエデくんは、知り合いなの……?