隠れ御曹司の愛に絡めとられて
そこで、ふと思い出す。
そう言えばカエデくんが誰かに似てるな、と何度か思ったことがある。
「……あ」
そうか、思い出した。
誰かに似てるって思ったのは、社長の奥様だ……!
お会いする機会はほとんどないけど、入社したての頃に社の記念パーティーでご挨拶させていただいた記憶がある。
兄弟であまり似てないのは、長男である専務が社長であるお父様に似ていて、カエデくんがお母様に似てるからか……!
そう考えれば納得がいく。
「あの、野村さん」
「……うん」
「つかぬことをお伺いしますが……」
「……うん」
「最近一緒に住み始めたのって、もしかして、楓さん、ですか……?」
「……」
いや、そりゃお弁当の話したら分かっちゃうよね?
私の無言を肯定と取った若月ちゃんは、「野村さんと楓さん、とてもお似合いです」と、嬉しそうに顔をほころばせてうんうんと頷いている。
「篠宮、カエデ……」
「そうですね。木偏に風って書いて、楓です。篠宮 楓さん」
「……」
楓くんは、社長令息……。
だったら全て合点がいく。
やけに高価な持ち物とか、ハイブランドの洋服を揃えてくれたりとか、何度か私の服をクリーニングしてくれた事ももしかすると篠宮家御用達の業者に頼んでたりして……。