隠れ御曹司の愛に絡めとられて
「あ、じゃあ野村さんも〝infinity〟に行ったことがあるってことですよね?」
「えっと、楓くんの働いてるお店……?」
「はい。公にはしていないらしいですが、あのお店の責任者って、篠宮取締役なんですよ」
「……ええっ?」
篠宮取締役と言うのは社長の弟さんで、つまりは楓くんの叔父にあたる人。
篠宮取締役は子会社の社長も兼務している。
今日の会議はその子会社の会議で……。
待って……すごく混乱してきた……。
「楓さんはこの会議で子会社の役員になられるらしいからご出席される、と言うことみたいですね」
「え? そう、なんだ……?」
「はい。資料にお名前がありました」
「……」
「楓さんが役員になられるって知ったのは私も今日のこの資料を見てからなので、少し驚きましたけどね」
まさか〝カエデくん〟の本名が、資料の中に書かれていた〝篠宮 楓〟だとは思うはずもない。
しかも、役員だなんて。
「ごめん……なんか色々、キャパオーバーで……」
「分かります、私もびっくりしました」
「し、篠宮家って、謎だらけだね……」
「あはは、ほんとですね」