隠れ御曹司の愛に絡めとられて

「他に聞きたいことは、ある?」

「えーと。楓くんは若月ちゃんと同い年……?」


後輩の若月結麻は、私より五歳年下の24歳だ。

楓くんも五歳年下だから、彼女と同い年ということになる。


「ああ、そっか。言ってなかったね。僕、高校生のときに一年休学してオーストラリアに留学してたから、結麻ちゃんの一個上なんだ。合コンの時の同級生は復学後のクラスメートなんだよね」

「え、じゃあ……25歳?」

「そう」

「……ふ、あはは……」

「え? 亜矢さんどうしたの?」


年齢の差は、一生縮まることはないと思っていた。

一生、私と楓くんは、五歳差なんだ、と。

それが……。


「年齢差、縮まったから……なんか、おかしくて……」

「ああ、なるほど。ふふっ、そっか」


たったの一年だけど、それでも私の中でそれはとても大きくて、高校時代の楓くんの留学という決断に私は思わず感謝した。

そして、ふと思う……。


「……楓くんがそんなにおおらかで明るいのって、オーストラリアに留学してたから……なのかな」

「んー、それは少しあるかも。向こうの人たちはみんなすごく優しくて明るくて、日本よりゆったりしてて。たった一年ですごくいい経験をさせてもらったって、いまでも思う」

「そっか。いいなー、私もオーストラリア、行ってみくなっちゃったな~」

「ふふ。じゃあ、新婚旅行はオーストラリアにする?」

「……は?」

「ん?」


小首かしげて、『ん?』じゃないのよ。

可愛い顔してまたサラッととんでもないことをぶっ込んで来る子だ……。

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