隠れ御曹司の愛に絡めとられて
「緊張してるのも可愛かったけど、やっぱり、背筋を伸ばして凛とした雰囲気がとても印象的だったんだ。すごく素敵だなって思った」
あの時は本当に色々いっぱいいっぱいだったけど、先輩にアドバイスされた通りとにかく背筋だけは伸ばしておこうと思ったことは覚えている。
そんな風に見えていたのなら、やっぱり先輩のアドバイスは的確だったと言うことだ。
「あの時って、本来なら僕は大学一年生のはずだけど、留学のために休学してたから、実際はまだ高校生だったんだよね」
「ああ、そうか、そうだね」
「それがすごく悔しくてさ。さすがに社会人の女性が高校生を相手に恋愛感情を持ったりしないだろうから」
「……確かに」
「ふふ、やっぱり?」
「そりゃ、未成年とか高校生とかは完全に対象外です」
「だからせめて大学生だったなら、って。ほんっとに悔しかったんだよね」
「んー、大学生でもあんまり変わらなかった気がするけど……」
「ええ? 亜矢さん、ひどいっ」
「あはは、だって、四つも下だよ? あの時の四歳差は大きいよー」
私の言葉に、ぷう、と頬を膨らませて拗ねる楓くんが可愛い。
「うん。僕もさすがにそれは分かってたから、あの時は本当に泣く泣く諦めた。だって年齢差だけは僕にもどうしようもないし」
「うんうん、現実的でよろしい」
「でも予想外に再会できて……今度は絶対に『落とそう』って思った」
可愛らしいふわふわの笑みが、いつの間にか妖しい笑みに変わる。
その豹変具合に、私は思わずドキリとした。
「ふふ、ごめんね? もう絶対に放してあげられないから、覚悟してね」
楓くんはそう言って私をギュッと抱きしめる。
……どうやら私は楓くんに捕まってしまったらしい。
あの時の再会は半分仕組まれていたものだと知るのは、まだもう少し先の話だ――。
―END―
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