隠れ御曹司の愛に絡めとられて

悪質だ。

この状態で彼女が行かないと答えるはずがないことを承知でそう尋ねる僕は、本当に悪い人間だ。

けれど、あまり手段を選ぶつもりもない。

彼女を傷つけないよう最大限の努力はするけれど、多少強引にでも僕の手元に置いておくための画策をする。


「ベッドはこっちだよ」


僕の声に「うん……」と素直に従う亜矢さんが可愛くてたまらない。

ベッドが視界に入るなりそのままそこへ倒れ込みそうになる彼女を引き止めて、「ほら、スカートがシワになるから脱がなきゃ」と促すと、寝ぼけまなこでスカートを脱ぎ始めた。

彼女のスカートがストンと床へと落ちる。


「ん……あつい」


そうつぶやいた亜矢さんは、ブラウスのボタンへと手をかけた。

真冬の外気にさらされたあとでこの暖かな部屋では、酔いの回った身体には暑く感じるのも無理はない。

ひとつひとつボタンを外す彼女をゆったりと眺める。

僕はとても悪い人間だから、彼女が服を脱ぐのを止めたりしない。

ブラウスを脱ぎ捨てたあと、ブラジャーとストッキングを脱いで床へと落とす。

ショーツだけを身にまとった美しい肢体が僕の目の前に惜しげもなくさらされ、これにはさすがに僕もめまいがしそうになった。


ふらふらとベッドへと近寄り、そのままパタリとシーツへと身を投げる。

すぐにスースーと寝息をたて始めた彼女を、僕はため息とともに見下ろした。


ほぼ裸同然の無防備な姿で眠りに落ちた、僕の女神。

絶対に自分のものにすると心に決めてはいるけれど、酔った女性と眠っている女性には決して手を出さないと決めていて、目の前の美しい人をただ指を咥えて見ているしかない。


「……ほんと、無防備すぎでしょ」


僕のベッドに広がる彼女の長く美しい髪を一房持ち上げると、それは僕の指からからサラリとすり抜けた――。


『隠れ御曹司の愛に絡めとられて』
~完結~

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