隠れ御曹司の愛に絡めとられて
美紀の前に座ってる男の子が幹事らしい。
彼のかけ声で乾杯の挨拶をして、男性陣の持つビールジョッキと女性陣の持つチューハイのグラスをカチンと合わせあう。
まぁ私は当然、ビールなんですけどね。
一杯目は絶対にビールでしょ、そこは譲れない。
私を除く女子三人は乾杯の後チューハイを一口飲んだだけでグラスをテーブルに置く。
それを横目に見ながら、私はビールをゴクゴクと喉に流し込んだ。
空腹にビールは良くないと思いつつも、この一口目が堪らなく美味しいんだから仕方がない。
気づけばジョッキの半分ぐらいまで減っていて、さすがに一気に全部飲むのはマズイと思い、そこで渋々グラスを置いた。
「亜矢~、相変わらず豪快な一口だね。でも、気を付けてよ?」
美紀が私のことを心配しての一言に、私は「大丈夫、分かってるよー」と返して、から揚げにガブリとかじりついた。
ビールにから揚げ、最高。
私はすっかり男性陣のことを忘れて、目の前にある高カロリーそうな食べ物とビールを往復する。
あっという間に一杯目が空になり、私は近くを通った店員さんを呼び止めておかわりをオーダーした。
女性陣はまだチューハイを一口か二口飲んだぐらい、男性陣はようやく半分程度飲んだところだ。
明らかに私のペースが最も早い。
そんな私を見た男性陣がやや引き気味な空気になっている。
あーあ、やっぱり帰っておけば良かったかなぁ。
まぁ、彼らにどう思われようと、別にどうでもいいか。