隠れ御曹司の愛に絡めとられて

彼女と篠宮専務が婚約してあまり間を置かずに、私と楓くんも婚約することになった。

どちらが結婚するとしても招待する人はほぼ同じなので、だったらいっそ一緒に結婚式を挙げてしまおうと言うことになり、現在のこの状況に至る。


さっきも述べたけど、私の隣には、私の父が。

そして、若月結麻の隣には、彼女の父親の代わりに、花婿の叔父である篠宮取締役が……。

若月ちゃんの両親は彼女が高校生の時に離婚していて、その後、両親のどちらとも連絡が取れない状態になっている。

それを知った取締役が彼女の父親役を買って出てくれたのだ。


「そろそろお時間です――」


式場のスタッフが私達にそう声をかける。

腕をそっと差し出す父に私は小さく頷いて、その腕へと手を添える。

若月ちゃんも、少し震えながら篠宮取締役の腕へと手を伸ばす。


式場の扉が開け放たれ、入場の音楽が静かに流れる中、私達はゆっくりと足を踏み出した――。


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