隠れ御曹司の愛に絡めとられて
――盛大な式を終え、更にもっと盛大な披露宴を終え……。
私と楓くんは、ホテルの一室へと引き上げてきたところだ。
「……ふふ。亜矢さん、綺麗」
私は披露宴での何度目かのお色直しで着た最後のドレスのままだ。
着慣れぬドレスだけど、楓くんがあまりにも嬉しそうに満足そうに私を見つめるから、まだしばらく脱げそうにない。
「良いね、青いドレス。似合ってる。他のドレスも良かったし、ウエディングドレス姿もすごく綺麗だった」
「……褒めすぎ」
「ふふ、いいじゃん。本当のことだもん」
「……楓くんだって、すごく格好良かったよ?」
「ふふ、ありがと。でも、伊吹には負けるんだよなぁ」
兄へのコンプレックスはまだ健在らしい。
そんな風に思う必要なんて、全くないのに。
楓くんは楓くんだ。
私は〝楓くんだから好き〟なのだ。
「……ねえ、楓くん」
「んー?」
「私は、楓くんの方が、格好良かったと思う」
「……ふふ。そう?」
「うん、そうだよ。楓くんが世界で一番格好良かった」
「ほんとに? ふふ、嬉しい」