隠れ御曹司の愛に絡めとられて

私にとっては、楓くんが一番だ。

誰よりも一番格好良くて、私が一番愛してる人。


「あのね、楓くん」

「うん、なぁに?」

「ありがとうね」

「ふふ、なにが?」

「私と結婚してくれて、ありがとう」

「こちらこそだよ。僕の奥さん」

「……」


〝奥さん〟と言う聞き慣れない言葉に私が戸惑っていると、楓くんがクスクスと笑う。

どうやら楓くんの術中にはまってしまったらしい。

私が少し睨むと、楓くんは笑みを浮かべながら小首をかしげた。


あーもう、全く勝てない。

ふわふわ笑う楓くんも、こうやって皮肉っぽく笑う楓くんも、そしてベッドの中で妖しく笑う楓くんも、いつだって私の心を簡単にさらって行く。

そうやって私の心の中をぐちゃぐちゃにかき回して、また満足そうにふんわり笑うんだろう。

彼は、そういう男だ。

でも私は、そんな楓くんが好きで好きでたまらなくて。

彼のためなら、私の心のひとつやふたつ――いや、いくらでも、差し出せる気がする。

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